酒場「咲楽」【妖怪ウォッチ】 (ページ3)

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蛙の来店ページ3

「いらっしゃいませ」

お店でよく口にする言葉。

私は、お客が来るたびに、どんなに忙しくても必ずこの言葉を言う。

いつも来られるのは、常連様がほとんどなのだけど

今日いらっしゃったお客様は、初めてのおひとり。

高めのポニーテールが特徴のお客は

私の真ん前のカウンター席に座った。

メニュー(ほぼお酒)を見つめながら注文してきた。

「うぅん・・・、鬼殺しとネギマ。」

「承知しました。確認させていただきます。」

お客は、どこか悲しそうな顔をしている反面

わくわくした様子で入ってきていた。

「鬼殺しとネギュゥマですね。」

考え事をしていたら、ついうっかり。噛んでしまった。

お客は、微笑んで

「ネギマな。」

と言って話を続けてくれた。

私は、カウンターの前の調理場で作って

話を聞いていた。

「都会は、空が見えないんだな。」

お冷の入ったコップを少し振りながら

お客は呟いた。私に聞こえるように。

コップにつき始めた水滴が、酒場の電気の色のように

ほのかにオレンジになっていた。

「きれいだな」

と、思いながら、私は返した。

「田舎の出身ですか？」

お客はニコニコしながら

「まあ、そういうこった」

と、返してきた。

その時ちょうど、お酒が酒庫から出された。

私は、酒庫の扉を開けた。

「ありがと・・・・て

　また勝手に飲んでいらっしゃる。」

ふぅ、とため息をついて腕を組んだ。

そのドアの先には、半分酒の入った焼酎ビンを持った

酒呑童子が立っていた。