ベイビーブルー (ページ45)

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嫌な予感ページ45

コンコン…

玄関をノックする音が聞こえ、オイラは起き上がった。

未だにオイラの腹の上にいたキャラとベリーは、不思議そうに顔を見合わせる。

そうだな、こんな時間に訪問者なんて…珍しいもんだ。

「はいはーい…って、何だ。インクじゃん。」

ガチャッと扉の開く音と共に、ハニーがそう声を漏らした。

扉の隙間から見えるインクは、少し顔が俯いていてオイラからは表情は伺えなかったが…何故だか変な感覚が背を走った。

そう、それは本能的に危険を察知したかのように…。

考え過ぎだ…そうは思いながらも、オイラは深くソファーに腰を沈め成り行きを見守る。

何時でも、手を出せるようにして…。

「やあ、ハニー！実はね、君に折り入ってお願いがあって来たんだ！」

「あー…またAUで何か問題でも起きたのか？しっかりしてくれよ…って、そうだ俺もインクに聞きたい事があったんだけどさ…「悪いんだけど、僕の用事の方が大事なんだ！」…お、おぉ…。」

インクの勢いに、思わず後ずさったハニーの後ろ姿をオイラはジッと見つめる。

「わ、分かった…じゃあインクの方の用事から先に聞かせてよ。それから俺の方も聞いてよね？」

「うん！あのね、僕のお願いはね…君の所の人間…つまりキャラをほんの少しの間借りたいんだ。」

ｻﾞｻﾞｻﾞｯ…

ノイズが耳の奥で貼り付く。

「……え、僕…？」

ｻﾞｻﾞｻﾞｯ…

乱れた履歴と呼吸音が響く。

「うん、そう…君が僕には…必要なんだ。」

空っぽの暗闇の奥で、ドロドロの何かが渦巻いて蠢く。

感情の抜け落ちた空洞が、色を捕らえる。

履歴は尚も乱れ、errorの字を表示し続ける。

知っている、知っている、この光景を見た日をオイラは忘れた事など無かった。

大好きなあの人の、過去はけして知ることは叶わなかった…初めて感じた不信感と恐怖。

まるで知りもしない赤の他人の皮を被っているように見えた、あの笑顔。

止まないノイズと赤いerrorの文字。

「………親父……。」

違う、有り得ない、だって…親父は死んだ。

もう何処にも居ない。

どれだけ涙を枯らして泣いても帰って等来なかった…あの人はもう…居ない。

じゃあ、今目の前に居るこのインクを…オイラはどうやって説明をつければ良い？