庭の金魚の波紋のその先 (ページ10)

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迎えの車に乗り込む俺と、北斗と、A。
Aは、未だにぷんすこと怒っている。

「なぁ、ごめんって。いい加減、機嫌治して…」
「やだ。公衆の面前でダサくされたの、プライドが傷ついた」
「A～」

　やれやれ…。どっちもどっちなんだよな～。AもAで、『北斗に可愛いって言われたい！』し、北斗は『俺以外にそんな可愛い姿(足)見せないで』って感じだし。はぁー。この喧嘩の頭は『おーおー、見事にすれ違ってんな～』って爆笑してたけど、HR終了のチャイムと同時にガンダッシュ決めて教室を出て行った北斗は、正直気持ち悪かったな…。Aを迎えに～と、1学年下の教室を覗けば、椅子に座ったA。と、その前で膝まづいて謝罪している北斗。を見て爆笑しているジェス。カオス空間だったな…。(ジェシーはそのまま『じゃ！』なんて言って早々に帰宅しやがったから、後でシメる)
　まぁ、なんにせよ家に帰るまでに終わらせてほしい。だって今日は……、ってあぁ。着いちゃった。今日は2人にとって大切なお客様が2名も来る予定だ。『到着致しました』って運転手さんもバックミラー越しにソワソワとこちらを伺っている。それに俺だけが片手をあげ苦笑いで返す。北斗はすっかり姫のご機嫌取りに夢中だし、姫も姫で怒ってるアクションを取ることで北斗に構ってもらえるからずっと続けてるのだろう。ねぇ、お二人さん？幹部である俺の親父たちが来てるの見えてる？お二人さん？玄関にすんごくピッカピカの革靴が2足あるの気づいてる？？？
　そんな俺の心配を他所に、尚も激しい言い合いをしながら居間の襖を思いっきりあける。

「ねぇ！こーち、聞いてよ！！」
「やぁ、A。元気そうだね」

　スパーン！
　え？目にも留まらぬ速さで開けたばかりの襖を閉めるA。え？お嬢さん？え？北斗は見えて居なかったらしく、こちらも同様、混乱している。
　AはAで、青ざめて一心に自分で閉めた襖を見ている。
　しかし流石とでも言おうか。向こうの方が1枚上手で、すぐに襖は開かれた。

「相変わらず元気そうで良かった」
「た、貴臣さん……」

　相変わらずキラキラした、にこやか笑顔のこの人は俺たち全員の恩人。
霞野貴臣さん。27歳で、カシラなんて物をやっている凄い人。