庭の金魚の波紋のその先 (ページ4)

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「ジェシー、慎太郎…。うるさい」
「えへ、ごめん」
「あ、ごめん。でも！」

　照れながらも謝罪をしてくるジェシーは、ついさっき帰って来てそのままこちらの来たのか、道着を持ったままだった。反対に、謝罪をしつつもそれでもと食ってかかる慎太郎は、どこか顔色が良くない。誰がどう見ても心配でたまらないと言った様子だ。

「慎太郎の言いたいことは分かる。おにーさん…、松村くんの噂が心配だからでしょ」

　恐らく中等部にまで拡がっているから、髙地も来たのであろう噂。
おにーさん、おにーさん呼んでいるが、当然彼の名前は知っていた。
一個上の小学6年生で、学年トップだった松村北斗くん。しかし、最近になって成績は落ち込み、更には中等部、高等部の悪い先輩と遊んでいる、とか…。当然、私だってそれくらいの噂は耳に入っている。しかし、

「もちろん、松村くんの噂は知ってる。だからって家の前で死にかけてるところを、助けない理由にはならない」

　そうキッパリ言えば少しは納得してくれたのか、まぁそうだけど…、とかゴニョゴニョ言いつつ引いてくれた慎太郎。ありがとう。
片や隣のジェシーは、今日から住むの？！仲良くなりたい！と、もう既に受け入れ体勢万全だった。
そこでハッと髙地を見た。入ってきたあの様子からして当たり前だろうけど、中等部にいる髙地も松村北斗の噂、そして彼がその人と言うのは知っているのだろう。貴臣さんは何かと髙地を信頼し、私のワガママのほとんどを髙地と相談するくらいだ。髙地に反対されれば、ここに置くことが難しくなる……。

「わかった。北斗はここで預かろう」
「！！いいの？！」
「いいも何も、北斗自身の言葉で『家に帰りたくない』って言ったんだろ？なら、ここで暮らしてもらうしかないだろ」

　いつもの優しい笑顔でそう言ってくれたのが嬉しくて、思いっきり抱きついた。
すると、開きっぱなしのドアからノック音。風呂場にいると思っていた樹だ。

「あの、盛り上がってるところごめんね？北斗倒れた」