美貌の圧制者 188 ページ7
「ジャク助だ」
3人の子供からヴィルを守るように彼の前に現れた幼少期のジャク助………ジャックの登場にAはそれなりに驚いた。
“““わ、ジャックだ！逃げろ！”””
ピューー！！
“お前、最近このへんに引っ越してきたヤツだろ。大丈夫か？”
“アタシ、ボクシングとフェンシングを習ってるの。アナタがいなくても1人で返り討ちにできた”
“そ、そうだったのか。余計なことして悪かった”
“ふふ……謝ることないわ。ありがとう。あの子たち、フィクションと現実を混同して文句をつけてくるなんて……随分おバカさんなのね”
“俺はあまりテレビは見ないからよくわからねーけど……。それだけあんたの演技が本物みたいだった、ってことじゃねーか？”
“そうね。じゃあ、次のオーディションでは主役を勝ち取って、今度は感動で泣かせてみせるわ”
“狙う席は、いつだって主役ただひとつ”
“でも……アタシが選ばれるのはいつだって
“ネージュが主演を務めた児童小説原作の映画。興行収入、初週で20億マドル超えらしいですよ！”
“やっぱりネージュはすごいな。あの愛嬌とピュアさは生まれ持っての才能だよ”
“ライバル役を務めたヴィルも、大したもんだ。まだ12歳とは思えない貫禄を感じさせる演技だったよ。彼もいずれ主役を張るようになるだろうね”
“でも……ヴィルはなぁ。いろいろ整いすぎているというか……浮世離れして綺麗だろう。視聴者に親しみを感じさせる“普通のティーン”を演じるには、ヴィルは特別すぎる。リアリティーがない彼には一生、主役だけは難しいんじゃないか？”
壁際にヴィルがいる事に気づかず、2人のスタッフはそんな話をする。
その話を聞き、さすがのヴィルも演技ではなく本当に悲しそうな顔をしていた。
“アタシ、美しくなるためならなんだってする”
“きついトレーニングも、面倒なトリートメントも、美しくなるためならちっとも辛くない”
“なのに…どうして？”
“いつも選ばれるのは、アタシじゃない”
“アタシはただ――最後まで舞台に立っていたいだけなのに”
「ん〜…難しい問題だな」
悲しげな表情で話すヴィルを見てAは呟いた。
だが、とりあえず自分の出来る事をしようと落ちてきたいつもの着ぐるみに手を伸ばしゴソゴソと着替える事にする。
そして場面が変わった。
子「あ！意地悪ヴィルだ！」
子「昨日もテレビで意地悪してたヴィルだ！」
子「ジャックもいる！」
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