美貌の圧制者 187ー圧制者の過去ー ページ6
「はい！いつものパターンです！！」
何も見えない真っ暗な空間に響き渡るAの謎のテンションの声に突っ込む者はおらず、彼女は満足したのか「いや〜なれってすごいね〜」とぼやいていた。
そして
ヒュウウウ……
ボトッ
「いて。あ、いつもの衣装だ」
パッ！
“ダッド！聞いて。オーディションに受かったの。今度は学園もののミュージカルドラマ！”
「あ、始まった」
“おめでとう、ヴィル！今度はどんな役なんだ？”
“もちろん主人公……の、ライバル役だよ。“いつもどおり”意地悪な悪役”
“世界一可愛い男の子を悪役に抜擢するだなんて、監督は抜群にセンスがあるな”
Aの目の前では、幼いながらも美しい顔立ちの少年、ヴィルが父親らしき男性に話しかけていた。
ダッドと呼ばれた男性は悪役に選ばれて少し落ち込む息子に優しい言葉をかける。
“前回出た舞台も、主人公をいじめる役だった。なんで悪役ばっかりに選ばれるのかな。僕、そんなに意地悪そうに見える？”
「いや、この頃から鬼教官の圧的なものは感じる」
“はあ！？”
「！」
“ど、どうしたんだいヴィル？急にそんな声を出して……”
“な、なんでもないよダット。なんか、いやな言葉が聞こえてきたような気がして……あはは……”
“そうなのかい……？さっきの話なんだがヴィルは特別美しくて、素敵な男の子だからかもしれないね。
“うん。わかってる、ダッド”
すると、場面が変わり幼少期のヴィルから見慣れた寮服を着たヴィルが現れた。
“でも……
“役目を終えたら、あとは物陰でハッピーエンドを眺めているだけ”
“アタシは――誰よりも長く舞台に立っていたいの”
「ふーむ……難しい問題だな」
すると、また景色が変わり賑やかな街中を歩いていたヴィルの目の前に3人の男子が行く手を阻んでいた。
“あ、見ろよあいつ！昨日のＴＶドラマで主人公をいじめてたヤツだ”
“よくあんな意地悪できるよな。性格悪すぎるだろ”
“近くで見るとなよなよしてて弱っちそう。オレたちで主人公の仇をとってやろうぜ”
“…………………”
タッタッタ！
“こら――っ！てめーら！寄ってたかって1人をいじめてんじゃねー！！”
「あ」
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