空っぽの瓶の中、愛をひとつ。【 Yuta.J 】 (ページ5)

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「 Aちゃん！」

菱川ちゃんから名前に変わっている… 。

お昼休み、誰もいない穴場スポットのベンチでお昼ご飯を食べようとしていた時、神宮寺勇太．

正直、恋愛脳の私からしたらすごく嬉しかった。だけど、ここで折れては負け．

わざと冷たく、塩対応をしたい。

「お昼一緒に食べよう？」

『 …人気者の神宮寺勇太なら、食べる相手たくさん居るんじゃないですか、彼女とか』

「彼女がいたらこんな事しないよ、Aちゃんを堕とすとか」

落ち着いた口調でそう言い、隣に座る。

『ふーん』

神宮寺勇太の昼食は、親に作ってもらったであろう弁当。

「 Aちゃんはパン派なんだ」

『まあ… 、親に変な気ィ使わせたくないから』

「そっか、ねえ要る？」

卵焼きを持って整った顔面で問いかけて来る姿は、まるで恋人で。不覚にも嬉しくなる

『いや、いいよ．ありがと』

「そっかあ」

卵焼きを口に入れる神宮寺勇太。
…てか私、いつまでフルネーム？

「ねえ、Aちゃん．こっち向いて」

『なに、わっ』

私の顔の前に綺麗な黄色色の卵焼き。

食べろ、ってこと？

「はーやーく、あーん！」

いや、彼氏感…

『ん、』

仕方なく食べて気づいた、間接キスで思わず耳が赤くなる．

身体の関係を平気で持つくせに、これにキュンとするなんて、矛盾している。

「ふふ、おいし？」

『うん… 』

ゔっ、彼氏感… やばい。

「 Aちゃんさ、俺のことなんて呼んでる？」

『神宮寺、勇太… 』

痛いとこをつかれた。

「フルネーム！？もー、勇太でいいよ．てか勇太って呼んで？」

『いや、でも… 』

「ね？」

『勇太… 』

「うん！」

何処か嬉しそうな顔をして返事をする神宮寺勇太。

ほんとは、なんとも思わないくせに。

こういうのを思わせぶりというんだ．