episode 10 ページ10
咄嗟に、そう言ったのは良いけれど。
別に家にあげてどうこうしようという訳でもなかったから。
「お茶と珈琲……あとはスポドリくらいしかないけど、飲みたいものある？」
「珈琲」
飲み物だけじゃ寂しいかな、そういえばご飯なんて全然食べてないからお腹すいたな、なんて思って冷蔵庫を覗く。
うちの両親は医師と看護師だからほぼ毎日いないようなもので、たまに母が料理を作って置いておいてくれる。
それも月1回あるかないかくらいで。
基本的に自炊しているけど面倒だと、コンビニとかで済ませてしまう。
だから。あるのはちょっとした野菜だけ。
「うーん」
ご飯だとおかずに困るし……パスタかな。
「市橋くん、パスタ食べない？」
ソファに座ってスマホを眺める彼にそう聞くと、こちらを見てフリーズした。
「え？あ、いやお腹すいたかなって思って。」
「食べる。」
ああ、よかった。
市橋くんはたまにフリーズするし、基本口数は少ない方だし。
まあ慣れてないからそうなだけかも知れないけれど。
それがまた意外で、可愛いと思う。
「はい。珈琲と、ミートソースにしました。」
お皿を市橋くんの前に置いて。
私も向かい側に座る。
「いただきます」
市橋くんも私の声にほんの少し、頭を下げて、フォークでパスタを巻いていく。
家族以外の人に食べさせることなんて中々無いし、ましてや男の子は初めて。
ドキドキと口に運んでいくまでの光景を見て。
「あんま見んな。」
「わ！ごめん！気になっちゃって！」
わたわたと私もフォークを持ってパスタを食べる。
我ながら良い出来だと思う。
そこからは無言で、付いたテレビ番組を見ながら食べて。
市橋くんが食べ終わって、自分の皿を持ってキッチンまで置いてくれた時にはなんか嬉しかった。
しかも、その後、仏頂面で
「美味かった」
なんて言うから、もう、ストンって。
完全に何かが落ちた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 282人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
桔子(プロフ) - 猫又さん» コメントありがとうございます！励みになります。ゆったり更新ですが、これからも見てくださると嬉しいです。 (2017年8月4日 22時) (
レス) id: 03f5afc14f (このIDを非表示/違反報告)
桔子(プロフ) - みく@企画垢さん» ご指摘ありがとうございます。直ぐに外しました。初心者の為また、何か間違いがありましたらご指摘下さると嬉しいです。 (2017年8月4日 22時) (レス) id: 03f5afc14f (このIDを非表示/違反報告)
みく@企画垢(プロフ) - オリジナルフラグを外してくださいね (2017年8月4日 21時) (レス) id: e89ce37d74 (このIDを非表示/違反報告)
猫又 - とても面白いです。これからも頑張ってください。 (2017年8月4日 21時) (レス) id: d6cba85abb (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：桔子 | 作成日時：2017年8月4日 13時
