冬のきまぐれ【葬送のフリーレン】

8話 ページ9

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彼がうちに来て三日、ようやく仕事する日がやってきた。


『はあ…』
「どうしたの？今日、ため息ばっかついてるけど」
『いや何でもないよ』
「そう？なら良いけど」


隣で仕事する同僚の言葉にぎくりとした。仕事中だからならべくヴィアベルさんの事を考えないようにしていたのに、どうやら態度に出てしまっていたようだ。

私はキーボードを打つ手を止めて彼女に向かって苦笑する。まさか漫画から出てきた男性と同棲する事になって、どうすればいいのか分からないんだよね。と言えたらどんなに楽か。

まあそんな事は言えないのですぐにパソコンに向き合う。今は仕事に集中しよう。考え事をしていて変なミスはしたくない。

ヴェアベルさんを無理やり頭の隅に追いやるように、画面を見つめた。








昨日、彼に合鍵とアパート周辺とその地一帯の地図を渡した。地図と言ってもG〇ogleマップを引き伸ばしてコンビニで印刷しただけの物だが。


『ここがうちのアパートです』
「あまり入り組んだ道はねぇんだな」
『道路がありますし、この辺はちゃんと整備されてますから』

道路や車についても全て説明した。もし万が一、車に轢かれたら生きている保証はないからだ。自転車にぶつかっても困るし、そこは念には念をと動画を見せたりした。

肝心の彼はやはり落ち着いていて、「怪我しに行く馬鹿がどこにいんだよ」と言われてしまった。私の必死さが何とか伝わったらしい。








『(それにしても帰ってくるかどうか、だよなあ)』


これは予想だが、私以外に彼を目視する人がいたらすぐうちから居なくなってしまうだろう。何となく、そんな気がした。

どこぞの御曹司とか、私よりはお金を持ってる可愛い女性とかで「葬送のフリーレン」を知っていれば誰でも彼に手を貸すと思う。

それこそ彼が「推し」ならそれはもう喜ぶだろう。彼と親睦を深めようとするだろうし、最終的には付き合ったりして。

…流石に話が飛躍しすぎか、それとも私の考えすぎか。


『…げほげほ』
「何、またなんか考えてんの？」
『い、いや何でも…』
「後で詳しく聞かせてよ」


考え事をしていたら変な咳が出てしまった。いけない、集中しないといけないのにヴィアベルさんが邪魔をする。

同僚にはなぜかニヤニヤと笑われるし、一体何の勘違いをしているのか、聞きたくもなかった。

後で適当に誤魔化そう、と心に決めて私は座り直した。

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