6話 ページ7
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「…い、おい、起きろよ」
『…?、』
遠くで声が聞こえる。私は一人暮らしなはずなのに一体誰が休みの日に声をかけるのか。デジャヴを感じながら目を開けば、こちらを見下ろす影にはっとした。
『ぃ、ヴィアベルさん…おはようございます』
「ああ。」
目を合わせれば呆れたような顔をするヴィアベルさんに、私は思い当たる節がなくまたデジャヴを感じる。
「Aはいつも昼前まで寝てんのか」
『ああ、そういう…いえ、仕事の日はもっと早く起きてますよ』
「昨日だって起きたの10時だったじゃねぇか」
『よく覚えてますねそんな事』
彼が突然、私のうちに来てから一日が経った。普通じゃありえない事が起きているのは分かっているが、対処法はまだ分からない。
それでも関わってしまったのだから最後まで面倒を見なければ、と思い始めていて人間は不思議なものだと思う。
『私、一応12時には起きる予定だったんですけど…』
「遅すぎるだろ。あと5時間もすりゃ動けなくなるぜ」
『平気ですよ、外には街灯があるので夜でも動けます』
「ガイトウ?」
『街灯というのはですね…』
寝起き早々、彼にこちらの世界の事を説明するのは億劫だが仕方がない。それに昨日だって質問責めされたのは記憶に新しい。
ベッドサイドに置いていたスマホを起動させて説明すれば、「そうか、ありがとうな」と彼は身を引いた。
『でももうこんな時間…ご飯作りますね』
「おう」
『ヴィアベルさんはいつ起きたんですか』
「6時だ」
『6時…朝ご飯は?』
「食べてねぇ。昨日そんな動いてねぇから、腹も空いてない」
昨日、とふと思い出す。あの後、彼が使う日用品を買いに行って、追加の食料も買った。それなりに歩いたつもりだったが、ヴィアベルさんは全く疲れていないらしい。
それと新しく分かった事だが、ヴィアベルさんはこちらの世界の物は持つ事ができた。それに彼が物を持つと彼同様に他人には見えなくなる事も分かった。
買い物からうちへ帰ってきた頃には夕方になっていて、朝ご飯兼、昼ご飯兼、晩ご飯を振る舞う事にした。
振る舞うといってもヴィアベルさんの口に合うか分からなかったので、スーパーで買った安い食パンとインスタントのコーンポタージュを出した。我ながら質素すぎるご飯だなと思ったが、自分の財布と話し合った結果がそれだった。
「…これ店出せるんじゃねぇか」
『ぶふっ』
スープを飲んでいた途中に真顔でそう言われたから吹いたのはしょうがない。
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綾兔 - 彰也さん» 消化ありがとうございます!やっぱり毎話毎話ヴィアベルと夢主の掛け合いが最高です!尊敬してます!それと、完結おめでとうございます!この小説は本当に大好きで、毎回楽しみにしてました!他の作品も頑張ってください!応援してます! (5月7日 21時) (レス) @page35 id: 837e222f3a (このIDを非表示/違反報告)
白黒名 - 完結おめでとうございます!ヴィアベル大好きな私は、この作品から色々な栄養をもらっていたので、「冬のきま ぐれ」には感謝の気持ちでいっぱいです!他の作品の執筆にあたっても頑張ってください!応援しています! (5月4日 23時) (レス) @page42 id: ee8aa02a3c (このIDを非表示/違反報告)
夜凪アリサ(プロフ) - 毎日楽しみにしていた冬のきまぐれ、終わってしまって少し寂しいですけどまた、いつか続き楽しみにしていますね!素敵な作品を作ってくださりありがとうございました!本当にお疲れ様でした! (5月4日 23時) (レス) @page42 id: 4a128355b0 (このIDを非表示/違反報告)
彰也(プロフ) - 綾兔さん» コメントありがとうございます!ちょうど告白じみた事を夢主がやってしまって〜のくだりをしようとしていたのでリクエスト消化しました!どうでしたでしょうか、、?喜んでくれれば幸いです〜またのリクエストお待ちしています! (4月28日 21時) (レス) id: 8516ee2748 (このIDを非表示/違反報告)
綾兔 - もうほんとに大好きです!ヴィアベルがかっこいいし、お話が面白くて毎回楽しいです!あの、できたらで良いんですけど、夢主がお酒飲んで酔ってて、ポロっと告白(?)しちゃうって言うのをみてみたいです!これからの展開がめちゃくちゃ楽しみです!応援してます! (4月28日 11時) (レス) id: 837e222f3a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:彰也 | 作成日時:2024年2月3日 0時