26話 ページ27
．
どうやら思っていたよりもアルコールを摂取していたらしい。視界がぐらりと揺らいで体が傾く。
良かった、近くにいたヴィアベルさんにはぶつからないで済む、とそのまま力が入らない体を重力に任せる。
痛いのは嫌だな、と思いながら目を閉じれば、強い力で体ごと引っ張られた。何が起こったのか分からないまま、力を無くした両手から離したグラスが床にぶつかる音が耳に届く。
「…痛ってぇ」
『…？……？！…えっ？！』
どたん、と一人が倒れるより大きな音が部屋に響いた。自分の下に厚みのある何かがあるのが分かって目を開ければ、ヴィアベルさんのうめく声が耳元で聞こえる。
『ヴィっ…ヴィアベルさん？！』
「…気をつけろよ。クソ、魔法使えるの忘れてたぜ」
急いで体を起き上がらせれば、仰向けに倒れているヴィアベルさんがいて頭の中が『？！』で埋め尽くされる。だが倒れる瞬間、強い力で引っ張られたのは分かった。
もしかしてそれでヴィアベルさんが私の下敷きになったのか。勢い余って反転した事に驚いたが、それよりも彼が私を庇ってくれた事に驚きを隠せなかった。
『どっ、どうして…』
「咄嗟に体が動いただけだ、それより頭打ってないよな？」
『はい…ヴィアベルさんこそ平気ですか』
「平気だよ」
いつものように口元に笑みを浮かべるヴィアベルさんに良かった、と安心するのも束の間、ふと私は床に手をつけているのを見てハッとした。
これは俗に言う「床ドン」なのでは、と。
『はっ…早く退きますね！』
「おい、またそんな動くと…」
『っ…？！』
「もう少し大人しくしろよ」
また頭がくらりとして、ヴィアベルさんに再度倒れるようにして体を預ける。もう一度起き上がろうとすれば、背中に手を回され抱きしめられるような形になった。
「急いで動くな」
『分かったので手、退けてくれませんか』
「そうしたらアンタ逃げるだろ」
図星で何も言えない私にヴィアベルさんは笑った。
そのまま体を預けていれば、お互いの心音が聞こえてくる。どくどくと速く動く私の心音に対して、彼の心音はひどく落ち着いていた。
こんなに体が密着しているのに変な気ひとつ起こさないのか、と少しだけ落ち込む。意識して欲しいわけではないが、女性として魅力が無い事を思い知らされるようで良い気はしない。
『ヴィアベルさん、離れましょうよ』
「まだだ」
そう言って抱きしめる力を少しだけ強める彼に、私はまた心音を速めた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 140人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
綾兔 - 彰也さん» 消化ありがとうございます！やっぱり毎話毎話ヴィアベルと夢主の掛け合いが最高です！尊敬してます！それと、完結おめでとうございます！この小説は本当に大好きで、毎回楽しみにしてました！他の作品も頑張ってください！応援してます！ (5月7日 21時) (
レス) @page35 id: 837e222f3a (このIDを非表示/違反報告)
白黒名 - 完結おめでとうございます！ヴィアベル大好きな私は、この作品から色々な栄養をもらっていたので、「冬のきま ぐれ」には感謝の気持ちでいっぱいです！他の作品の執筆にあたっても頑張ってください！応援しています！ (5月4日 23時) (レス) @page42 id: ee8aa02a3c (このIDを非表示/違反報告)
夜凪アリサ(プロフ) - 毎日楽しみにしていた冬のきまぐれ、終わってしまって少し寂しいですけどまた、いつか続き楽しみにしていますね！素敵な作品を作ってくださりありがとうございました！本当にお疲れ様でした！ (5月4日 23時) (レス) @page42 id: 4a128355b0 (このIDを非表示/違反報告)
彰也(プロフ) - 綾兔さん» コメントありがとうございます！ちょうど告白じみた事を夢主がやってしまって〜のくだりをしようとしていたのでリクエスト消化しました！どうでしたでしょうか、、？喜んでくれれば幸いです〜またのリクエストお待ちしています！ (4月28日 21時) (レス) id: 8516ee2748 (このIDを非表示/違反報告)
綾兔 - もうほんとに大好きです！ヴィアベルがかっこいいし、お話が面白くて毎回楽しいです！あの、できたらで良いんですけど、夢主がお酒飲んで酔ってて、ポロっと告白(？)しちゃうって言うのをみてみたいです！これからの展開がめちゃくちゃ楽しみです！応援してます！ (4月28日 11時) (レス) id: 837e222f3a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：彰也 | 作成日時：2024年2月3日 0時
