冬のきまぐれ【葬送のフリーレン】

21話 ページ22

．


『っ…げほげほっ…』


ヴィアベルさんと水族館に行って次の日。仕事に行こうと目を開ければ、喉の痛みと悪寒を感じて『やってしまった』と思う。

昨日の夜から何となく寒気はしていたが、別に平気だろうと放っておいたのが良くなかったらしい。

久々に外で遊んだのがいけなかったのだろうか。そんな事を考えながら、とりあえず熱を測ろうと立ち上がろうとした瞬間、ぐらりと視界が傾いた。


「おい、大丈夫かよ」
『ヴィアベルさん…』


危うくその場で倒れそうになった所を、いつの間にかいたヴィアベルさんに支えられる。彼の方がいつも早起きで、起きているとは思っていたがちょうどこの場にいて良かったと安堵した。


『ちょっと…風邪ひいたみたいで』
「だろうな、体が熱いし震えてる。寒いか？」
『まあ、それなりに…』
「薬はどこだ、あるんだろ」
『そこの二段目の棚にあります、紙袋ごと取って下さい』


声の掠れ方からすぐに異変を感じたのだろう、私を軽々と抱き上げてベッドに戻すと、すぐに棚から風邪薬を持って来てくれた。

突然のお姫様抱っこに驚いたが、「動くなよ、落ちるぜ」と言われたので大人しくするしかなかったが、寝起き早々心臓に悪い。

私はふう、と息を吐いて何とか自分を落ち着かせてから薬を飲んだ。その様子も側でじっと見られているので心が安まらないのだけれど。


「今日は仕事休まねぇとな」
『そうですね…』
「連絡したら寝ろよ」
『そうしますよ…』


ヴィアベルさんに風邪がうつったら大変なので、会社に連絡した後、私は静かに目を閉じて布団にもぐり込んだ。


息をするたびに喉が痛む。昨日までは元気だったというのに、季節には勝てない。これじゃ全然寝れないのでは、と少し呻きながら目を開ければ、ヴィアベルさんと目が合ってしまい『ひっ』と声が出た。


『ヴィ、ヴィアベルさん何を、』
「何って、Aを見てるだけだ」
『そんな事しなくても』
「こっちじゃ流行り病で死ぬのは普通だったからな、アンタに死なれちゃ困る」
『大丈夫ですよ、薬飲みましたし』


テーブルに備え付けてあった椅子を私のベッドの前に持ってきたのか、我が物顔で座りながらこちらを見つめるヴィアベルさんに私は口を開いたり閉じたりする事しか出来ない。


「寝るまでは見といてやるから大人しくしろよ」
『でも…げほげほ…』
「心配すんな、病人には何もしねぇ」
『はい…』





ヴィアベルさんに促されて私は渋々目を閉じた。

22話→←20話

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す