あのトキ一瞬で… 【紫】vol.3 (ページ9)

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A先生のおった場所。忘れるわけがない
電話口の相手に告げると

“本当に、A先生のお知り合いの方のようですね

……確かに、神谷 A先生は、当園の職員です”

「ホンマですかっ？あのっ、お会いすることって可能でしょうかっ？」

“……その前に、村上さんにお話ししたい事があるのですが。明日の20時に園までお越し頂けないでしょうか？”

「わかりましたっ。必ず伺います。失礼します」

電話を握る手がブルブルと震える

見つけた

やっと……

やっと見つけたっ！

「よっしゃぁ～～～！！」

とりあえず、どうしていいかわからず叫んで喜びを表現

すぐに彼女の勤め先の電話番号と園名を携帯に登録

今日が1人の仕事で良かった

彼女にもうすぐ会えると思うとニヤけてしまう自分の顔

こんな姿、メンバーには見せられへんからな

……にしても、さっき電話で言われた“話したい事”って一体なんやろ？

次の日

教えてもらったコインパーキングに車を止める

仕事以外でスーツとか着たの……覚えてへんほど昔の事

ネクタイ曲がってへんやろか？
車のミラーで格好を確認

静かな住宅街の中
淡く光る灯りを頼りに歩いて行くと、保育園の前に上品そうなご婦人の姿

「こんばんは」

声をかければ、こちらに振り向き

「こんばんは。村上さん…ですね？どうぞお入りください」

門が開き、園内に足を踏み入れた

暗い園庭。こんな時間に子ども達がいるわけない部屋には、何ヶ所か灯りがともっている

靴を履き替え長い廊下を歩くと

「はぁーい、みんなお布団に入ってね。電気消すよ？」と、先生の声

「うちは、都内でも珍しい24時間保育を行っているんです。あと、要望があれば病気が完治していないお子さんを預かる病児後保育も始めたんですよ」

「へぇ～、それは先生方大変ですねぇ」

「そうですね。熱意ある先生方ばかりで感謝しています」

“どうぞ”と言われて通された部屋

応接セットのソファーに座るよう促され、着席すると温かいお茶をテーブルに置かれ

「申し遅れました。私園長柴田と申します」

「園長先生…やったんですか」

「はい。ところで村上さんは、なぜA先生を探していらっしゃるんですか？」

フワリと微笑む園長先生の核心を突く質問

この答え次第で、彼女と再会できるかが決まる

自分の気持ちを整理しつつ、拳を膝の上でギュッと握り

「神谷先生とは…」

言葉を紡ぐ