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「まだ やっとんのか？」
「おぅ、やっと半分や」
「続けるん？」
「半分…残っとるからな」
「見つからへんのやろ？そろそろ止めたらどぉや？」
「なに言うてるん？意地でも止めへんで？」
俺が次の電話をかけようとすると、大きなため息をつきながら
「………神谷…」
「あぁん？なんやて？」
「神谷……A先生の苗字。“神谷”言うねんて」
「はっ…なっ、なんでっ？何でお前が知ってるん？」
「まぁ、ええやん そんな事。どーでも」
「いやっ、どーでもえぇ事ないっ。それに何でもっと早よ教えてくれへんかったん？」
「お前ん事、試しとった」
「試しとったぁ？」
「A先生が居らんくなって、探す言い出した時、正直 勢いだけやと思った。
2000園なんて膨大な数、1園ずつ電話するなんて無謀な事、1週間…長くて1ヶ月続けばえぇとこやって。すぐ諦めて忘れてまうわ。そう思っとったけど……
いやいや、ヒナがそこまでしつこいとは……
そこまで、あの人の事 想っとるとは………
俺の負けや。ここまできたら、とことん追いかけたらえぇわ。
俺はもう、何も言わへんから」
俺の肩 ポンと叩いて
「頑張りや」
ひと言残して楽屋を出る ヨコ
神谷 A
初めて知った彼女の フルネーム
たったひとつの小さな情報
ヨコがくれた 小さな情報
それだけやけど、俺のやる気を今まで以上に掻き立てるには 十分やった
彼女の苗字がわかっただけで、ちゃんと話を聞いてくれる園が急激に増えた
……にも関わらず、彼女が勤める園は見つからない
折り目がボロボロになり始めた紙を広げ、今日も電話をかける
暑かった夏はあっという間に過ぎ去り、半袖では肌寒い日も増え、秋はもうすぐそこ
彼女と出会った“秋”が近付いていた
「お忙しいところ すみません。ありがとうございました」
今日もまた×印が増えた
残されたのは あと10園
この中に彼女の勤め先がなかったら……
不安になりながら、次の園の番号をプッシュした
“もしもし…”
「もしもし、ちょっとお伺いしたい事があるんですけども…」
“はい…”
「実は、お世話になった先生を探してまして。名前が神谷 A先生とおっしゃる方なんですけど」
“あの、失礼ですけど貴方のお名前は？”
「あっ、私 村上 と申します」
“村上さん、その神谷先生の前の勤め先 ご存知ですか？”
この電話が、俺の運命を大きく動かすものとなる
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作者名：ちか
| 作成日時：2015年12月12日 8時
