あのトキ一瞬で… 【紫】vol.3 (ページ6)

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「あっ、先生！丸山くんが泣いてますよ？」

ゲストさんがマルの前で膝に手を置き、前かがみになって

「どうしたのかな？」

と声をかけた

さすが演技の仕事もされとるだけあって、先生にみえるわ

……でも、ちゃうねん。ホンマもんの先生は、自分もしゃがんで子どもの目線まで下がんねん

「すっ…すばるくんがぁ叩いたぁっ…」

「おっ…俺っ？」

マルからご指名を受けたすばる
慌てて反対側の段差に腰掛けた

先生役に徹するゲストさんに

「すばるくん、叩いちゃダメでしょ？」

そう言われて拗ねるすばる

子ども同士ケンカになった時、1人の話だけを聞いて相手の子だけ叱るのはアカンのやって

「すばる、なんでマルん事叩いたん？」

すばるの前にしゃがんで話してみれば

「やって、マル…ウザい」

「ふはっ、そぉかぁ…マル、ちょおこっち来い」

「なに？」

「すばるな？今ちょ～っと1人でやりたい事あんねんて。もう少しだけ、静かに待っとったってくれるか？」

「あいっ！」

「すばるも。マルお前と遊びたかっただけやねん。邪魔しようとしたわけやないんやから、叩いたらアカンねんで？」

「……ん、ごめん…」

「おっしゃ、ほしたら仲直りの握手や」

仲直りした後、A先生が必ず子ども達にしていた事

“先生も、2人の事大好きっ！”と、子ども達を抱きしめる

「よし！2人ともえぇ子やっ」

すばるとマルにギュッと抱きついたら

キャーっ！と歓声のような悲鳴のような声で我に返った

「信ちゃん、ホンマもんの先生みたいやったなぁ♪」

「そういや村上くん、保育士さんの役ドラマでやったもんな」

ヤスと亮が俺を見てニコニコ

「でも、村上くんがホンマの先生やったら、子ども達寄ってこぉへんやろ」

「なんでやねん！」軽くツッコミながら

「関係者の皆様、ドラマのオファー等ありましたら、こちらまで」

「何あれっ！自分の事、売り込んでんで」

「ちゃっかりしてるわ～」

ブツブツ言うメンバーに

「ハイハイ、そこのガキども先生の話聞いてちゃっちゃと踊って下さいよぉ」

その後は進行に徹底してはいた

けれど、チラリチラリと俺の目の前には楽しそうに踊る彼女が現れて

本番中に幻影が見えるとか

俺よっぽどやな

俺………プロ失格やな