☆黄さんの証言 ページ32
前の仕事が早く終わって、早めに次の楽屋入り
音楽聴きながら他のメンバーが来るのを待っとったら
ガチャリとドアが開いて
「亮、早いやないか」
入ってきたのは 村上くん
「そぉなんよ。前が早く終わってなぁ」
ガサゴソと鞄を漁る後ろ姿に返事をすれば
「丁度 よかったわぁ」
と言いながら、振り返ったその顔はニカッと笑ったキラッキラのアイドルスマイル
「これっ、見てみ？」
スマホをグイッと近付けてくるから、体を引いて画面を見れば、おさげ髪に黄色いリボンの女の子
「この子って…」
「せやねん。涼子っ、かわえぇやろっ？」
「お…おん」
この子が噂の涼子ちゃんか
村上くんがいつも“亮と涼子が居らんかったら、俺達は出会っとらんかったやろうしな。ありがとうな” なんて
俺 なんもしてへんのに“恋のキューピット”みたいに言うてくれて、なんやくすぐったいけど、嬉しかったりもする
けど
この写真の涼子ちゃんは、確かに可愛らしい。でも、ごっつぅイヤそうな顔しとるけど…
「そん時の涼子、機嫌悪ぅてなぁ」
と言いながらスマホを置いてコーヒー淹れに行くから、それを手にとり何気にスワイプさせてみると
そこには めっちゃ笑顔の涼子ちゃんとA先生
なんや 親子みたいな写真
「でもな？笑うとかわええんやで？」
俺の分のコーヒーまで持って近付いてくるこの男は……“お父さん”てとこか
「ほんまやねぇ。この写真すごくええなっ」
クルリとスマホの画面を向けると
「お前っ、何 勝手に見てんねんっ！」
顔真っ赤にしてスマホ取り上げられたけど、頬 緩みっぱなしやで？
「よかったな。今 幸せ？」
「ん〜…まぁ なぁ」
写真を見てる横顔が優しすぎて
震えた携帯を見て ふっと笑うその顔が男前すぎて
俺まで嬉しくなってくる
「A先生から？」
「ん〜」
「今日、会うん？」
「会わへんよ？俺 今日遅なるからなぁ」
「でも、鍵 持ってるんやろ？家で待っててくれたりせぇへんの？」
「たまにはあるけど。向こうも忙しいからなぁ」
「ふ〜ん…じゃっ、お泊まりとかはぁ？」
「おっ…お、お泊りぃぃ〜？」
さっきの男前は何処へやら。この慌てよう……
付き合い始めてもう 1ヶ月過ぎてるよな？大人な2人やし？そーいう事も、もう経験済みなんかと……
「痛っっ！」
机の角に足ぶつけて痛がる村上くん
見てるとなんか ちょっと 心配になった
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作者名：ちか
| 作成日時：2015年12月12日 8時
