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事務所、メンバーさん…他に行くところなんてあるのだろうか？
一言も発せず車を運転する村上さんの後ろ
窓の外を見ると見慣れた景色
前に勤めていた保育園の近くを走っている
視界が一瞬暗くなり、パッと明るくなったと思ったら、地下駐車場
ガチャリとドアが開いて
「どぉぞ」
車を降りると慣れた手つきでタッチパネルを操作して、自動ドアの中に消えていくから、急いで後について行き、エレベーターに一緒に乗り込む
何の迷いもなく目的の階のボタンを押すから
「ねぇ、ここって…」
もしかして……
「ん〜？俺ん家」
「はあっ！」
「おまっ、声 大きいわっ」
軽く頭を叩かれたのと、エレベーターのドアが開くのとほぼ同時で
驚きのあまり動けない 私
「とりあえず、行くぞ」
閉じかけたドアを何とかすり抜けて、1番奥の彼の部屋の前
ドアが開くと私の部屋の4倍はある玄関
リビングもキッチンも、私の家の何倍もあって、生活の差を目の当たりにした
「何？どないしたん？」
「ううん、大きいお家…だね」
「俺…A先生ん事、ちょっとわかってきたかも」
“こっち”と言われて連れてこられた冷蔵庫の前。その中にはビールと水以外入ってなくて
「昨日の晩飯、あれやってんで？」
指差す先には、綺麗に洗われたコンビニのお弁当の空容器
「一緒やねんて。34歳 独身男性なんてこんなもんやろ？
ただ、ちょっとセキュリティーのしっかりした、ピアノ弾ける様な部屋 借りよう思ったら、ここになってもぉただけ。
掃除も大変やし、俺はもっと狭いとこのがええねんで？
せやから、住む世界が違うとか 思わんといてな？」
「うん…わかった」
あまり使ってなさそうなキッチンの床に転がる猫用のおもちゃ。そういえば…
「今日って…」
両手にマグカップを持った村上さんが、私の視線の先に気が付いた
「チー か？今日はホテルでお泊りやねん」
「そっか。会ってみたかったな」
「ええやん、会いに来たら」
「えっ？」
コトリとローテーブルに置かれたマグカップ
「せやから、いつでも会いに来たらええって」
カシャンと何かを置く音がして、ソファーに座る村上さんの後ろからローテーブルの上を見ると
２つのマグカップの間に
「鍵？どこの？」
「あぁ〜っ！もぉっ。ええから はよ ここ座りっ」
バシバシとホコリが立ちそうな位 叩かれたソファーに、彼と隣り合って座った
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作者名：ちか
| 作成日時：2015年12月12日 8時
