あのトキ一瞬で… 【紫】vol.3 (ページ18)

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「はっ…はぁ～？」

自分の思っていたのと違う答えを出した私を見る目は、真ん丸に見開かれてて

だって、“好き”って気持ちだけではどうにもならない

貴方はそういう世界で生きてる人なんだから

「それって、どーいう事？ちょっ意味わからへん…」

ゆらゆらと揺れる瞳の奥は“何で”という疑問しか見て取れない

「さっきも言ったけど、このまま一緒に居て事務所の人に気付かれたら、別れるように言われるでしょ？だったら、離れられなく前にお互い別々の道を歩んだ方がいいかなって」

私の話を聞きながら、みるみる表情が変わって

「…んでっ？」

「あと、世間に知られてしまった時に一番迷惑かけるのは、メンバーさんだし…
あんな良い人達に心配かけたくないし。そもそも私達の事、賛成してくれる訳ないよ」

「はぁ～…」

呆れたように盛大なため息をつき、携帯をポケットから出しながら

「ちょぉそこで待っとき」

“なんやねんメンバーかいっ。俺の気持ちはどーなんねん”って苛立ちながら離れていったと思ったら

「もしもし、村上ですけども。お疲れ様ですぅ～」

とても機嫌よく時折笑顔を見せながら何件か電話をしている

私、なんか怒らせるような事言った？
ううん、当たり前の事言ったつもり

私だってもう若くない。お付き合いして、その先の事考えるような歳だもん

彼とそれが望めないわけじゃないってことはわかってる

でも、彼の年齢と人気を考えたら、いつになるかはわからない。保証も……ない

そんな賭けみたいな恋愛。私にはできないよ

それに、私が傍にいたらそれがバレてしまった時に迷惑をかける人、ショックを受ける人、数えきれない位いるじゃない

だから“一緒にいられない”って言ったのに

ズカズカと私の元に戻ってきて

「行くで」

と、右手首をガッチリ掴んで引っ張るこの人は

私の気持ちなんて、全然わかってない

保育園の近くのコインパーキング

「乗って」

助手席のドアを開けてくれるけど、そんな所に乗れるわけがない

躊躇していると

「俺の車、乗られへんの？」

「違うよ。そうじゃなくて…」

チラリと後部座席を見ると

「はぁ……」

また、大きなため息をついて

「どーぞ」

「…お邪魔します」

助手席の後ろに乗り込んだ