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新しい環境 新しい職場
これまであった出来事は全部忘れて仕事に打ち込もう。そう考えていた
3月31日。彼との最後のメール
“さようなら”のひと言を送信してすぐ、メールアドレスを変更して彼の連絡先を消去した
「おはようございますっ！」
「おはよう。A先生 今日も元気ねぇ」
“若いっていいわぁ”と荷物を片付ける同僚の先生
同僚と言ってもここの先生達は私よりも経験豊富な先輩保育士さんばかりで、私なんてひよっこ同然
24時間保育のこの園では、早番 遅番 夜勤の3交代制。ただでさえ慣れない仕事。忙しくしていれば彼の事なんてすぐに忘れられる。そう思ってたのに
テレビをつければ 笑顔の彼が映っていて
ラジオからは 「何でやねんっ」とツッコむ声
コンビニに立ち寄れば 雑誌の表紙を飾り
時には大きな看板となって街に登場
1年前の私なら心の中でキャッキャと喜び人目を気にしつつ、その看板を写真に収めるなんて事 してたかもしれない
でも、今は俯いて通り過ぎる事しかできない
以前のように“ファン”に戻っただけ
CDやライブDVDも発売されればCDショップに買いに行ったし、雑誌も発売日をチェックして本屋さんに足を運んだ
だけど全て見る事も聴くことも出来なくて、家の本棚に山積みになっていった
出演番組だって録画予約しているけれど、もちろんそれも見る事なんか出来なくて。HDDレコーダーの容量は一杯になってしまいそう
これだけ“彼”が街に溢れていれば、忘れようにも忘れられない
それに私のクラスにいる“しんちゃん”こと真一くん
サッカー好きの八重歯の可愛い男の子ときている
神様はどれだけイタズラ好きなのか
真一くんのこと“しんちゃん”と呼ぶたびに、一瞬浮かぶ彼の顔
こんなことあの人が知ったら“仕事中に何してんねん。集中せぇやっ！”って怒られちゃうかな？
水曜日の午後。あの公園があるであろう方を見ながら思う
無理やり忘れる事なんて ないのかもしれない
もう会うこともない。連絡を取り合う手段さえ失ったのだから、もう少し彼のこと想っていてもいいのかな
とりあえず、1年は……
彼と初めて出会った あの日までは
この想いを伝えられなくても、自分の気持ちに正直にいよう。そう思った
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作者名：ちか
| 作成日時：2015年12月12日 8時
