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「よかったんか？こんなんで…」
「んっ？何が？」
「やって…2人だけでの初めての食事が宅配ピザ て…」
「いいよ、私 ピザ好きだよ？」
「んなら ええんやけども…」
村上さんのお腹が大きな悲鳴をあげた後、何か食べようって話になったけど
男性の一人暮らし、冷蔵庫に食材なんてあるわけもなく
外に食べに行こうって言い出すから、全力で抵抗して
百歩譲って商店街の定食屋さんならって事になったけど、時間は21:00過ぎ。閉まってるかもしれないって、敢え無く断念
結局、前に1回注文した事あるっていう宅配ピザに落ち着いた
トップアイドルが宅配ピザの注文の電話してるとこなんて、見られないよなぁなんて他人事のようにその背中を見ていると
「はい…村上です」
「ねっ、名乗っていいの？本名」
電話を終えた彼に 一応 確認
「えっ、なんで？んなもん気にしとったら 俺 出前取られへんやんっ」
……ごもっとも
「それにここのマンション、下で荷物受け取ってくれて、管理人のおっちゃんが上まで届けてくれんねん」
「へぇ〜、そうなんだ」
そうこうするうちに、インターフォンが鳴った
「いつもすんません。はい、ありがとうございます〜」
モニターを確認しつつ、しばらくしてから玄関に向かいピザを持って再び現れた彼
「外にある台にな、荷物 置いてってくれてなぁ。あっ、でも俺だけやないで？他ん家もそぉやからな」
この人 一体今日はどうしたんだろう
特別なんだろうなって。そんな事してもらってるの彼だけなんだろうなって
今 私 思ってたもん
なんで私の思った事 わかったんだろう？
食事を終えて食器をお片付け。洗い物をしていると
「明日、仕事は？」
「明日は遅番。お昼くらいに出るよ？」
「ほしたら そろそろ送ってこか？」
時計を見ると23:00をまわってて
「じゃあ、お願いします」
タオルで手を拭くと
「ほれ」
コートと鞄を持ってきてくれて
「ありがとう」
受け取る時に触れた 手
「冷たっ、何でこない冷たいん？」
「洗い物 してたから？」
帰り支度をして靴を履くと、スッと伸びてきた左手
また手首 掴まれると思ったら、今度はギュッと手を握ってくれて
「ほんまは両方とも温めたりたいんやけどなぁ。今日は右手だけで我慢せぇ」
さっきまで冷たかった右手がポカポカしてきて
「うん、我慢する」
フッと笑って私の手を握る力が強くなるから、私もこの手を離さない様に、力を込めて握り返した
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作者名：ちか
| 作成日時：2015年12月12日 8時
