あのトキ一瞬で…【紫】 (ページ6)

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慌てて“亮ちゃん”じゃない事を伝えたのはいいけれど

『亮ちゃんが来たら大パニック』

なんて、失礼な事を言ってしまった私

そんな私の言葉を、冗談交じりに笑い飛ばす村上さん

涼ちゃんが現れて、またまた失礼な発言を連発

それでも涼ちゃんの話を真剣に受け止めて、ちゃんと受け答えもしてくれて、最終的には自分達のCDの売り込み

その上、この短時間で“友達”になってしまうなんて…

涼ちゃんは元来の人見知り。そんな彼女の心を開いて笑顔にしてしまった

それはきっと彼の人柄なんだろうな

握手を交わして笑い合う2人の姿を見ながらそう思った

最初は“アイドルの村上さん”と思って緊張したけれど、話をしてみて近所のお兄さんみたいで勝手に親近感が湧いちゃって

いい出会い……だったかも

“失礼します”って挨拶をして、フワッとした気持ちのまま、その場を後にするはずだった

なのに

“連絡先とか…教えてもらえませんか？”

このひと言で、私の心は冷静さを取り戻した

『ジャニーズのアイドルなんて、みんなイケメンでしょ？絶対遊んでるって。その辺の女の子に声かけて、連絡先ゲットしてそのまま一度きり…みたいな？

あんたもいい加減、現実見なよ？』

学生時代の既婚子育て中の友達に会うたび言われていたけど

その度に

『そんなの偏見。見た目で決めつけないで！』って言い続けてきた

だけど……

さっきの村上さんの言葉が頭から離れない

なんの取り柄もない、いち一般人に声かけて…
私そんなにお手軽な女に見えるのかなぁ？

正直、ショックだったし傷ついた

村上さんが、出会って数分の人にあんな事を言うなんて思ってもいなかったから

保育園への帰り道

「A先生、どうしたの？」

「何でもないよ？」

「憧れの“村上信五”に会えて、あんなに嬉しそうだったのに」

「そう？」

「さっきまで、ウッキウキの顔してた」

「そう言う涼ちゃんだって、村上さんに“友達”って言われた時、すごく嬉しそうだったよ」

「はぁ？あれは村上信五が強引に…」

「ふふっ」

「でも、あの人….“いい奴”だと思う」

「……うん」

本当に……そうなのかな？