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いつもと違って“信ちゃん”って呼んでみたり、サッカー わざと下手に見せたり…
ホントあの子の考える事 わからないなぁ…と、2人を観察していたら
華麗にシュートをきめた涼ちゃん
イェーイとハイタッチする姿は、何だか親子みたいで思わず笑みがこぼれた
それを見ていた周りの子達
すぐさま2人に駆け寄り村上さんに『サッカー教えて』とせがんでいる
みるみる子ども達の輪が大きくなって、困り顔の村上さん
騒ぎになったら 大変っ！
慌ててそちらに向かうと
“A先生！”
息が苦しくなったのは
きっと 慌てて走ってきたせいで
初めて村上さんに名前を呼ばれたせいじゃない…はず
村上さんのご好意に甘えて、子ども達にサッカーを教えてもらってるはずなんだけど…
「はい、信ちゃん負け〜。次 オニね」
サッカーはものの10分で終了。急に始まる鬼ごっこ
「あっ、信ちゃん そこ入っちゃダメ！」
「なんでっ？」
「そこ バリア場。オニ 入れないの」
「何やそれっ？俺らん時 そんなもんなかったぞぉ？」
「今はあるの。とにかく ダメェ〜」
「なんでやねんっ！」
子ども達の理不尽なルールにも付き合ってくれる 村上さん
以前、うちの保育園に女性タレントさんが取材に来た事があった。カメラが回ってる時は子ども達の相手もしてくれていたけれど、カメラが止まると人が変わったように冷たい態度
あぁ、テレビに出てる人って こんな感じなんだって幻滅したっけ
「あっかんっ。俺 そろそろ帰らなっ！」
“え〜っ、ヤダぁ〜” “もっと遊ぼうよ”
名残惜しそうな子ども達に
「わかった わかった。また来るから」
そう言う彼の顔は、テレビの中のままのアイドルスマイルだけど
“またなぁ〜”って何度も子ども達を振り返り手を振る姿は やっぱり近所のお兄ちゃん
「A先生、今日はありがとうございました」
「いいえ。こちらこそ ありがとうございました。あの…これ、よかったら」
差し出したミネラルウォーターのペットボトル
「ええんですか？すんません」
それを受け取り、安定のアイドルスマイル
そう、この人は テレビの中の人。“アイドル”なんだ
近所のお兄ちゃんじゃない。これ以上 近付いたらダメなのに…
「毎週水曜はここの公園 来はるんですか？」
「来週は来られへんけど、また絶対来ます…
子供達とも、約束したんで」
走り去る彼の背中を見て、息が苦しくなるのは
“絶対 来ます”という言葉を聞いたから……じゃないはず
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作者名：ちか
| 作成日時：2015年10月24日 7時
