わたしとわんこ #01

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「やっぱり中庭クラスには勝てなかったね。」


後夜祭の前に集計が張り出されて、うちのクラスは6位。
樹くんクラスの焼きそばは2位になってた。

クラス替えのない持ち上がりで3年を迎える。
来年は屋台だなんてうちのクラスは気が早いし、雰囲気がいい。

任意参加の後夜祭は高校生なら自由に見ることができる。
他校の生徒も多いから、本当は出たくなかったんだけど･･･。
今年は安井も京本もバンドをするってことでまどちゃんと体育館へ向かう。

ちなみに渡辺はアクロバットSHOWを披露するらしい。
まどちゃんがさっきリップを塗り直してる姿が可愛かった。


「結構まばらに空いてるね。」

「あそこは？」

「いいね、じゃああそこにしよ。」


ちょうど通路になってる横が空いてて、そこに2人で座る。
始まってしまえばもう席はあるようでなくて。
好きな先輩や後輩が壇上に立てばみんなもうもみくちゃで。
それを座って眺めている私たちはなんていい子なんだろうって話である。

京本ボーカル、安井と真田くんがギターで出てきた会場が盛り上がる。
むかつくけど京本の歌は、カラオケで何度聞いても上手だなって思う。
絶対に本人には言わないけど。

こっそりまどちゃんが渡辺に夢中な動画を撮る。
“しょうたかっこいい”って口が動くのも納めたし、渡辺に送った。

後夜祭が終わってぞろぞろ出口に向かって歩く。
結構もみくちゃにされて、これが嫌で来たくなかったことを思い出した。


「ねぇねぇここの生徒？」

「そうですけど…。」

「帰り一緒に駅まで行かない？」

「いや大丈夫です。」

「駅までの行き方わかんなくなっちゃってさぁ。」


後夜祭なんて校内だけでやればいいのに。
他校の生徒との交流って大切だと思うけれど、これはちょっと違う。


「友達と約束があるので。」


そう言っているはずのまどちゃんを探したけど見える範囲に居ない。
話しかけられてるうちにはぐれたみたい。

すごい人が押し寄せる体育館で、私はひどく焦っている。


「本当に大丈夫なんで。」

「いいじゃん、いいじゃん。
　ちょっとだけ！駅まででいいからさぁ！」


ナンパなんて初めてで、強引な誘いを断る方法を知らない
考えてるうちに右手はがっちりつかまれてしまう。
こんなこと自分の身に降りかかるなんて思ってもみなかった。


「ほんとに…あの…。」

「いいじゃん。お茶でも飲もうよ。」


ぐいぐい引っ張られてどうしようもなくなる。

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