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ひとつ上の階の購買部へ階段で向かうと、会議室から藤井くんが出てきた。
「相変わらず階段すか。」
「朝も階段です。」
「しげとAさんぐらいやろ、そんな人。」
「丸山先輩最近太ったから始めたみたいだけど、途中でエレベーター乗ってた。」
「ああ、やから変なところから乗ってきたんや。」
「毎朝階段使ってたらなれますよって、今朝ちょうど話したんだよね。」
「あっせやこの会議室に居てください。
神ちゃんが髪の毛のアレンジとコスメの色合わせしたいって。」
「本格的すぎやしませんか？藤井くん。」
「購買部企画、5位まで景品出るんすよね。」
「そんなにいいもの出るの？」
「下から言うと、スタバ5000円分カード。」
「コーヒーは会社のでいい。」
「5000円分の商品券。」
「無難なのが一番使えるもんね。」
「ディズニーペアチケット。」
「うん。」
「興味なさすぎて気持ちがいいわ。」
「ディズニーペアチケット＋ランドホテル。」
「1位は？」
「星のリゾート、軽井沢。」
「え？」
「星のグループペア宿泊券。」
「うそ…それはやばい。」
「やばいやろ、俺めちゃくちゃセンス良くない？」
「購買部、上半期も達成して下半期も好調だもんね。
それにしてもすごいね…でもまぁ人気投票だと思うよ。」
「俺的にAさんは意外性投票で狙いに行こうと思う。」
「私で1位なんて取れるわけないでしょ、無理無理。」
馬子にも衣裳…なんて言葉すら知らないだろうな、藤井くん。
まぁとはいえその言葉が通用するのは20代がギリギリだろうなぁ。
「じゃあ1位取れたら、俺と一緒に行ってや。」
「なんで藤井くんと…まぁでも現実的に難しいと思うから。」
「ほんならええやん、取れへんならええやろ？」
「まぁ行く人もいないし、友達も居ないからいいけど。」
「もし万が一ペアチケット取れたら誰誘う予定やったん？」
「んーしげかな。」
「え？なんで、しげ。」
「毎朝公園で会うから。」
「2人で朝活してるん？」
「いや、同じ公園のランニングコースなだけ。
たまにすれ違うだけって感じ。」
「じゃあなんでしげ？」
「近所に友達いないし、同期も寿退社とか転職とかでいないし。
最近一緒にご飯食べたのしげだから…しげかなって感じ。」
「なんかAさんってやっぱり変わってるよね。」
「藤井くんに言われるとなんかちょっとへこむね。」
苦笑いして見上げた顔は、造形美みたいにきれいだった。
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作者名：kiki. | 作成日時：2020年10月31日 20時
