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「大丈夫･･･うん。」
「ほんまごめんー、よけとこって思ったら手が滑ってん。」
「平気だから気にしないで。」
背中が濡れてしまって、どうしようかなって思いながら歩き出す。
するとさっきまで背中を向いてたしげがこっちに向いて歩いて来る。
「A。」
「ん？」
「お前そのまま後ろに下がり。」
「え？なんで。」
「ええから、そのまま俺がいいって言うまで。」
「わかった。」
しげの優しい声に従い、足元に気をつけながら後ずさりしていく。
「止まれ。」
言われるがまま止まると･･･私の手からモップを取り横に投げて両手を自分の制服で拭く。
「･･･お前大きい声出すなよ？」
「えっ？」
しげがプールサイドからあがって、後ろに気配を感じた。
その瞬間に手が脇の下を通り、プールの底から足が離れた。
「そのまま歩き。」
「はい。」
よくわからない状況だけど、しげが動く方向に後ろ向きで歩く。
「もういいで。」
「あっえっと。」
「ちょっと来い。」
手を引かれるように男子更衣室に入らされる。
「タオルは･･･あったあった。」
「それしげの？」
「いや、小瀧の。」
「いいの？」
「ええよ、とりあえずそれで拭き。」
「うん。」
言われるがまま濡れた首のあたりと襟足、太ももの裏あたりの水気を取る。
「あとこれ。」
「しげ帰りどうするの？」
「今日Tシャツ着とったからあんまり汗かいてないから。」
「･･･ありがと･･･だけどちょっと頭追いついてない。」
差し出されたYシャツを手に取りながら、出た言葉にしげが視線を私から外す。
「体育着忘れるからやろ。」
「･･･え？」
「下着透けてんねんて･･･恥ずかしいやろ？」
「あっ･･･。」
「わかったら、はよ着替え。」
そう言い残してしげは男子更衣室から出て行った。
「なにそれ･･･。」
一連のしげの行動を思い出しながら、Yシャツを脱いで借りたYシャツに袖を通す。
半袖が五分丈ぐらいになって、丈も長くてスカートを調整する。
「優しいってずるい。」
水がかかってからのしげはいつもと違くて、思い出すだけで恥ずかしくなる。
更衣室から出て、プールまで歩いて行くとホースでいろんな人に水をまき散らすしげ。
ふと目が合うといつものしげだった。
「お前もう着替えないんやから、終わるまでそこ座っとけ！」
って言いながら、ニコっと笑った。
目の下に出来たえくぼに鼓動が早くなるのがわかった。
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作者名：kiki. | 作成日時：2019年3月9日 21時
