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いつも通り学校に行くと、下駄箱にはいくつかのチョコレート。
“フリーの男子にはあげやすい”って言ってた言葉を思い出す。
上履きに履き替えて階段をあがる廊下に黄色い紙袋をもったAが目に入る。
「おはよ。」
「おはよ、あーやっぱりもらってる。」
「Aが言った通りだった。」
「だから言ったでしょ？」
そのまま一緒に教室まで行こうと思えば、左腕に小さな手が触れる感覚。
「ん？」
「…これ。」
「え？俺に…？」
「そう。美味しいかわかんないけど。」
「ありがとう。」
「うん…。」
黄色い紙袋を上から覗いたら、ハート形と猫型のガトーショコラ。
小さな紙が一枚だけ入っていてそれを手に取って読んで、ポッケにしまう。
すたすたと歩く彼女の右手を取ってみれば、目に水の膜が見えた。
「…これ。」
「私に？」
「これ見た瞬間Aにあげようって思ったから。」
「ありがと…嬉しい。」
「ちゃんと美味しいと思う、モロゾフだし。」
「家に帰って大事に食べる。」
そう言って笑顔になった瞬間、小さな雫が頬を流れる。
それを手で拭えばびっくりした表情のあと、また笑顔になった。
「Aさぁ･･･勇気出せた？」
「美勇人くんが頑張れって言ってくれたから。」
恥ずかしそうに俺の手を振り切って教室に入っていく背中。
ぼーっとしてたらキタミツの“教室へ入れー森田ーSHRだぞー”って声。
急いで教室へ入り、自分の席に座ってポッケに居れたカードを出して見る。
《Will you be my Valentine?》
---恋人になってくれますか？
樹とやっすーがいるグループラインに[カラオケ今日行けない]と送る。
机の隅っこに出した筆箱にカードを立てかけて、斜め前に座る横顔に胸が高鳴るのを感じた。
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作者名：kiki. | 作成日時：2019年3月9日 21時
