20 プール掃除と恋のハジマリ / Daiki.S ページ36
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「自分どっから来たんやっけ？」
「東京。」
「そんなんさっき言っとったから知ってるわ、東京のどこや。」
「目黒。」
「中目黒？」
「ううん、目黒。」
「目黒と中目黒って近い？」
「歩ける距離だけど･･･駅が違う。」
「へぇ。」
「楽しい？」
「会話や！隣になったから会話するやろ。」
「そう･･･だね。」
「クールやな、今年の夏は例年より暑いらしいからいいわー。」
「なにそれ。」
「意味を問うな！会話はテンポっていうやん！」
父の出張についてかないといけない年齢だった自分を呪ったあの日。
高校2年の6月に引っ越してきた、大阪の進学校。
東京で通ってた高校の系列校へと編入をした。
転入1日目、隣になったクラスの人気者の重岡って人。
気を遣って初日から話してくれるのはいいけど、すごい疲れた。
“会話はテンポや！”って･･･意味をなさない会話についてけなかった。
「しげうっとうしいやろ、ごめんな。」
「あっううん･･･気を遣ってくれて話してくれてるんだと思う。」
「通常運転であれやから気ぃつけてな。」
「そうなんだ。」
「あっ俺の名前知らんよな、神山です。
みんなから“神ちゃん”って呼ばれてるから。」
「じゃあ神ちゃんって呼ぶね。」
「ほんなら俺はAちゃんって呼ぶわ。」
「うん。」
重岡くんが休み時間に居なくなって、代わりに来た神ちゃん。
明るい髪色がまぶしく、柔らかい感じの人。
「ちょっとちょっと神ちゃんどいてやー。」
「ああ、ごめんごめん。」
そう言って椅子から立ち上がって、重岡くんの机にひょいっと座った。
「なんの話してたん？」
「しげウザいやろーって言うてたとこ。」
「なんやそれ、Aウザかったんか･･･ほーかほーか。」
「私はそんなこと言ってないよ･･･ね？神ちゃん。」
「そうやったっけ？」
「明日から口きいたらんぞ！」
「え？」
「冗談やわ、そんな顔せんといて。」
「しげあんまりAちゃん困らしたらあかんよ。」
「うるさかったらうるさいって言うから･･･大丈夫。」
「やってさ、ほらー神ちゃんおかん心配し過ぎやで。」
チャイムが鳴って、神ちゃんが自分の席へ戻る。
「重岡くん･･･次の授業なんだっけ。」
「国語やで、安田先生優しいから眠たなるわー。」
「ありがと、寝ないようにしないと。」
「あと･･･俺のことはしげでええよ。」
そう言った声が低めで少しだけ心がざわついた。
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作者名：kiki. | 作成日時：2019年3月9日 21時
