Short Story #02 (ページ34)

今日:13 hit、昨日:1 hit、合計:40,531 hit

※ ページ34

+++

爽やかな香り、目を開けると真っ暗で頬に当たる感覚が洗いざらしのシャツだった。

「大丈夫ですか？」

「はい･･･大丈夫です。」

「良かったです。」

ぎゅうと上から抱えられるように抱きしめられて、その距離で話掛けられる。
いい声が耳に響く声がくすぐったい。

落ちたステンレス製のトレンチがまだ動く音がする。
そんなことより･･･近すぎて卒倒してしまいそう。

--- やっぱり胸がざわついて仕方ない。

「ちょっと、まっ」

金髪の人の声、フロアを駆け抜けてくヒールの音。

「さくちゃん大丈夫？」

「大丈夫ですけど、安井さん危ないですよ。」

「いやほんとすいません、みなさんも。
　お代は僕が支払いますので･･･失礼しました。」

その足で金髪のホストクラブの店長さんはカウンターへ。
私はまだ支えられている、右手にドキドキして。

「あの・・・大丈夫ですか？」

「コーヒーぬるかったんで、シャツが汚れただけです。
　これから掃除するので、カウンターの方へご移動お願いします。」

「はい。」

「荷物も僕がお持ちするので･･･。」

私のカバンが入ったカゴとミルクティーを持ってカウンターへ。
いつもの席、北斗さんが申し訳なさそうに私の顔を見る。

「汚れなかった？」

「大丈夫でした。」

「北斗さん、ちょっと掃除しちゃいます。」

「終わったら裏で着替えてこい、シャツの替え使っていいから。」

「ありがとうございます。」

雑巾やらなにやらを持って、テーブル席の方へ行く。

「やっすー頼むよ、マジで。」

「冷静に話そうって思ってたらここ入っちゃってさ。」

「顕嵐に付きまとってた女？」

「そうそう、もうハルカハルカって大変よ。」

「それはそれは大変だろうけど、5000円払って。
　あと作間のシャツ代もだから最低1万円は払ってもらうよ。」

「わーってるっつうの。」

金髪の人がオレンジジュースを飲んだまま私の顔を見る。

修羅場をちょっと楽しいと思ったからかなって思った。

作間くんが居なかったら洋服どころか、ローンで買ったmacも死んでたと思うとぞっとした。