Short Story #02 (ページ28)

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「くれるの？」

「やるわ。」

「ありがと。」

買ったときは温かかったんだとわかる、ぬるいココア。
優しい甘さが風磨先生みたいで本当に泣きそうになる。

「学校大っ嫌いで、進学なんてしたくなかったけど。
　風磨先生がこんな狭い世界で塞ぎ込むなって言ってくれた。」

「うん。」

「自分が好きなように学校生活送ったらいいって。
　行きたくない日は休めって、勉強したくない日はあるって。
　そんなの変なことじゃないって、当たり前だって言ってくれた。」

「そうなんや。」

「その代わり話しかけてくれたやつは大事にしろって。」

「へぇ。」

「廉だったんだよ？覚えてない？」

「俺？」

「そう、数学のノート見て間違ってるって。
　私が持ってたシャーペン手に取って直してくれた。」

「そんなことあった？」

「あったの、だから廉だけは大事にしようって。
　高校に入って初めて出来た友だちだから。」

「ふーん。」

進学校に進んで、なじめない毎日。
何度も学校を辞めたいってママとパパを困らせて。

風磨先生はそんな私を肯定してくれた、大事な存在。
最後の学校行事は先生のクラスで終わりたかったのにな。

「Aは人付き合い苦手やんか？」

「うん。」

「俺は人付き合いわりと得意な方やねん。」

「だよね、廉の周りにはいつも人がたくさん集まる。」

「高校からこっち来て、それこそ最初は無理してたんよ。
　そんな俺を見かねて風磨先生が“肩の力抜け”って。
　二度と戻らない学校生活、好きなやつらと好きなことしろって。」

私だけじゃないって知ってたけど、廉もそうだったんだ。