Look at Me #01 (ページ25)

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08 ずるい人 [Side You] ページ25

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「あっぶねー。
　Aボール当たらなかった？」

「ちょっとびっくりしたけど大丈夫。」

「よかったー。」

「ありがと。」

「シュート練少しサボりすぎたな…まじゴメン。
　怖い思いさせた。」

「ううん。」

「やっぱり階段で見てる方が安全だな。」

「そうだね。」

バックボードに当たったボールが私の方に飛んでくるのはわかってたけど、どんくさい私は目をつむるしか出来なかった。

次の瞬間、ふわっと香った香水と汗ばんだ腕が私を包み込んだ。

助けに来てくれたのが顕嵐だってすぐにわかった。

「顕嵐は当たらなかった？」

「俺は全然平気。」

「よかった。」

「Aが怪我しなくて本当によかった。」

そう言って頭をぽんぽんっとする。
私の手を引いて立ち上がらせてくれた顕嵐に駆け寄ってきたのはあの子だった。

「怪我は？あんまり無茶しないでよ。」

「無茶してない。
　ゴール外した俺が悪いから。」

「でも足捻挫とかしたら練習もできなくなるのに。」

「そんな心配すんなって。」

「彼女なんだから心配くらいさせてよね。」

さっきまで向けられていた視線はすぐにあの子に移った。
私にしてくれたみたいにぽんぽんと前髪のあたりをリズムよく撫でる。

もうそれが当たり前になった現実に一気に気が抜けた。

『顕嵐は佐伯さんと付き合ってるんだから』

こんなこといつも思ってるはずなのに、いよいよ我慢ができなくなって涙がこぼれた。
そんな気持ちに顕嵐が気づいてくれることなんてない。

「ほしちゃん大丈夫？」

「ちゃかちゃん…うん。
　ちょっとびっくりしただけ。」

「泣くほど怖かった？
　それともなんか当たった？」

「ううん、ちょっと怖かっただけだよ。」

「そっか。」

「私もう行くね。
　試合がんばってね…。」

あの子と話す顕嵐を見るのが嫌で体育館の端っこを他の部活の邪魔にならないように歩く。
体育館を出るまでに名前呼んでくれないかなって思ったのに。

私が帰ったことにすら気付いてない。