Look at Me #01 (ページ12)

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「ほしちゃん。」

「ジンちゃんと約束？」

「今日神宮寺泊りに来るんだ。」

「お泊り会？楽しそうだね。」

「親と喧嘩したらしくって。」

「そうなんだ。」

「最近反抗期みたいで。
　あのメッシュすごく叱られたんだって。」

「ふふふ。似合わないってみんなにいじられてたよね。」

「でもまぁその程度で消化されるならいいよね。」

「うん。」

「階段に居ないから探しちゃった。」

「チア部が荷物置くっていうからどいたの。」

いわちが隣に体育座りをしてチア部が練習するステージを見る。

「へー。ほしちゃん大丈夫？」

「なんで？別に平気だよ。」

「そっか…あっ外した。神宮寺へたくそー。」

「ふふふ。顕嵐がんばれー。」

「すごく上手になったよね、顕嵐。」

「うん。努力のたまものだから。」

「今日もかっこいいね。」

「うん。」

きっといわちは私が顕嵐を好きだってこと知ってる。
聞いてくるわけじゃないけど、感じ取ってくれる。
この絶妙な距離感はいわちにしか出せなくて、それに助けられることばっかりだ。

「Aータオルー。」

そう言ってコートの端から歩いてくる顕嵐にタオルを渡す為に、自分のカバンからハンドタオルを出す。
それを持って立ち上がって駆け寄ろうとした時に、ステージから駆け寄る足音に追い抜かれた。

「顕嵐くん使う？」

「えっいいの？」

「うん。汗すごいよー早く拭いた方がいいよ。」

「気が利くねーさえちゃん。」

「うるさい。ジンは自分ので拭きなよね。」

「さんきゅ…洗って返すから。」

「いつでもいいよ。」

駆け寄っていった彼女の後ろ姿。
この前まで阿部くんって呼んでたのに。
走って揺れるポニーテールに嫉妬する暇もなく手に持ったタオルをきゅっと少し握りしめた。
するとちゃかちゃんがたくさん汗をかいて私の方に寄ってきた。

「ほしちゃんタオル借りてもいい？」

「ちゃかちゃん忘れたの？」

「今朝玄関に置いてきちゃってさ。」

「小さいけどいい？」

「全然。やわらかくて気持ちいいね。」

「よかった。」

「洗って返すよ？」

「ううん。大丈夫。」

ちゃかちゃんから受け取ったハンドタオルをカバンの隅っこにしまい込む。
一緒に帰りたくないなって思ったけど、待ってしまうのは惚れた弱みってことみたい。

顕嵐の首に掛かるアディダスのタオルがすごく嫌で見るのをやめた。
いつも渡すキャラクタータオルを思い出して、ここでも勝ち目がないと思った。