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「じんーAー!」
「おー。部活お疲れ。」
「A上から見てただろ?」
「うん。暇だったから。」
「校庭で見てりゃいいじゃん。」
「寒いもん。」
「そりゃそうだけど。」
「こいつ風邪ひいたら長いからなぁ。」
「確かに、だいたい風邪はAからうつされてた気がする。」
「そうそう。んで俺らが苦しんでる時にはもう治っててさ。」
「私も学校行きたくないってわめいておばさん困らせてたよなぁ。」
「小さい頃の話でしょ。もう。」
幼稚園が同じだった俺たちは、小中高と同じ毎日を過ごしてきた。
一緒にずっといるのにひとつの糸も交わることがなかった。
好きの糸が結ばれてないことなんて珍しいことじゃない。
「顕嵐くん。」
「花蓮ちゃんだ、俺行くわ。」
「おう。また明日な。」
「Aちゃんと布団かけて寝ろよ。」
そう言って頭をポンッとして御厨の方は向かっていった。
顕嵐と同じマフラーにぐっと沈む口もと。
さっきと同じ、笑顔なのに切なすぎるAの顔。
すぐに歩き出したら追いついてしまうから、Aと駅前のカフェに入る。
「二人が付き合ったらどうしよう。」
「顕嵐と御厨?」
「うん。」
「でもその可能性高いわけだろ?」
「そうなったら諦められるのかな。」
「諦められんの?」
「うーん。」
「たぶん無理だろ。考えるだけ意味ないだろ、それ。」
「でもね・・・諦めようとしてるのは嘘じゃないよ?
だって顕嵐の恋が実ったらすごくすごくうれしいから。
私は笑顔で“良かったね”って言ってあげないといけないの。」
「いけないの?」
「そう・・・いけないの。」
Aが両手で持っても大きなマグカップを傾ける。
「っていうか好きって言ってみれば?」
「言えるわけないじゃない。」
「付き合ってないわけだし、顕嵐はフリーだし。」
「でもみくりんのこと好きなのに。
好きだなんて言って困らせたくない。
それに顕嵐に“ごめん”って言われたら立ち直れない。」
「まぁ確かになぁ。」
「でしょ?だから好きなんて絶対に言わない。」
「そっか。」
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作者名:kiki | 作成日時:2018年10月1日 16時