8時間先の未来 / Hokuto.M ページ26
透明でアクリルで出来た半円の中、閉じ込められたキレイな街並み。
逆さにするとキラキラしたラメが雪みたいに降り積もる。
日本で過ごす最後の冬、その向こうに背中を押してくれた愛しい人が笑ってる。
「ほんとに、北斗が作ったの？」
「ん？」
「センスがいいから聞いてみた。」
「結構失礼だと思うよ、その質問。」
「北斗だから聞いたの。」
「あっそう。」
好きだとか愛してるとかそういうことはあまり口にしてくれない。
本が好きで、陶器の置物が好きで、ひとりが好き。
･･･私のことを2年前に大切にしたいって言ってくれた人。
ドイツにある日本語学校で働くことが私の夢。
日本からいなくなる私と付き合いたいって言ってくれた人。
揺らぎそうになると、いつだって強く背中を押してくれる。
とってもとっても強い素敵な人。
「まだ見てるの？」
「だって見て？凄いキレイなんだもん。」
「俺が作ったんだから当たり前。」
何度ひっくり返しても変わらないのに、何度も手首を返しては光に当てる。
「Aが住んでた街並みに似てると思わない？」
「え…たしかにそうかも。」
「気づくのが遅いねぇ、鈍感な子だこと。」
「なにそれー。」
赤い屋根はうちの実家、一度だけ来ただけなのにね。
見えにくい幸せを小さくちりばめてくれる。
そのどれも落としたくなくて、前よりも好きが募ってく。
スノードームの中、白いキラキラが下に落ちていく。
感傷的になるといつだって後ろから抱きしめてくれる。
なんにも言わないけど、好きだよって愛してるよってぬくもりが言う。
本当にあと少しなんだなぁって思うと、春が来るのが憎らしくて仕方ない。
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作者名：kiki | 作成日時：2018年10月1日 16時
