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「仕事?」


そう言いながらお姉さんの前にしゃがみこむ。


「ん?」

「涙の理由。」

「違う、仕事はできる方なの。」

「そっか…じゃあ男?」

「そっちはねー見る目がないみたい。」

「そうなの?」

「普通で良かったのに、普通に幸せになりたかったのに。」

「のに?」

「付き合ってた人に婚約者が居たの。」

「まじ?ドラマじゃん。」

「ね、私もそう思ったよ。
 一緒に住む家の内覧会まで行ったんだよ?」

「なんかなかったの?疑わしいとこっていうか。」

「職場の2年先輩、仕事もできて私にも優しくて。
 結婚前提に付き合ってるからって…両親にまで会いに行ったのに。」

「そいつやばくない?」

「やばいって・・・そうだねやばいよね。
 別にさ裕福な暮らしとかそういうの求めてなかったのに。
 一緒にご飯食べて、いずれ子供が出来てさ?
 パパとママになれたらそれだけで幸せだと思ってたのになぁ。」


普通の幸せほしいってそんなに欲張りなことなんかな。

誰かと結婚して、その人と一緒に眠って朝を迎えて。

また今日も一日頑張ろうって思うこと、別に普通なのに。


「見る目ないねって、親友が言うの。」

「・・・まぁそうだろうけどさ。」

「私が悪いって、先輩は大学生の頃から付き合ってる彼女が居て。
 その人はどこかの会社のご令嬢で、そこの跡を継ぐんだって。」

「もしかして…。」

「私だけ知らなくて、バカみたいに浮かれてたんだって。」

「親友なのに言ってくれなかったんだね。」

「ね・・・なんかほんとバカだよ。」


明るいお姉さんしか知らなくて、お酒が好きでおでんが好きで。
ただのコンビニの店員とお客さんだけなのに。
やたら小さく見えて、抱きしめてあげたくなる。


「明日・・・仕事行ける?」

「まだ水曜日だもんね・・・休もうかなって思った。」

「でも行かないとだめだよね。」

「休んじゃだめか・・・。」

「負けたみたいになるじゃん、ってかなんなん?
 俺さそいつも知らないしお姉さんの親友も知らないけど。
 第三者から見てどっちもおかしいし、なんでお姉さんが泣かないといけないわけ?」

「風磨くん・・・。」

「クズじゃん、そいつ。
 彼女じゃないじゃん、将来約束した素敵な人が居るクセに。
 いい女捕まえてもてあそんで…ばかじゃねぇ?」

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作者名:kiki | 作成日時:2018年10月1日 16時

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