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「急に大人にならないでよ、みんなと同じこと言わないでよ。」
そう言いながら道端に突然座り込んだ、A。
視線を合わせるようにしゃがみこめば瞳はさらに潤みを帯びて、ひとつまたひとつと涙がこぼれる。
「優しくしてほしかったからふっかにしたんだもん。
偉かったねってよくやったねって言ってほしかったんだもん。
だからふっかがいいのに、会社の人と同じこと言われても嬉しくないんだから！」
俺の前ではいつだって可愛い女の子だった。
スーツを身にまとい社会で働くキャリアウーマンじゃなかったのに。
俺を呼ぶ理由、わかってたはずなのに。
ほんとに俺って友だち止まりに自分からこうやってなり下がるんだよな。
カールキープされた前髪を優しくぽんぽんとしても、涙は止まらないらしい。
「Aはよくやったよ、はなまるあげる。」
「遅いんだから、もうやだ。」
「じゃあ…おんぶしてあげる。」
「はぁ？」
「疲れたんだもんね、お仕事頑張ったんだもんね。
ふっかが今日は最上級に甘やかしてあげましょう。」
「今日だけ？」
「…はぁ？」
12時を告げるベルの音。
イルミネーションが一気に消える。
あるのは冬空に煌々と光る月と小さな街灯だけ。
「ずっと甘やかしてほしい。」
「無条件に？」
「うん…甘えたい時だけじゃなく。
ふっかはずっと私の味方で居てほしい。」
「いつもそうしてきたつもりだけど？」
「…ふっかが好きなの。ふっかじゃなきゃ嫌なの。」
酔っ払いはわりといつも言えないことを言うって言うけど。
「とりあえず、大好きな背中に乗りなさいよ。」
「ふっかぁぁぁぁぁ！」
「ったくうるさいんだから、お姫様抱っこがいい？」
俺のカバンと自分のカバンを持ってしゃがんだ背中に暖かい体温。
「おっも！」
「重たくなぁい。」
「そうですね、お嬢様。」
「ふっかは優しいから甘えたくなる。」
「うん。」
「好き･･･だから･･･すきなの。」
寝息が聞こえて頬が緩む、12時15分。
起きてからも言ってくれるのでしょうか？
そろそろ俺が友だちっていう場所から動くべき時期なのかな。
背中に愛しさを感じながら冬空の下を歩く帰り道。
明日の朝びっくりするAの顔を思うとまた頬は自然とほころんだ。
---WISH by 嵐
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作者名：kiki | 作成日時：2018年10月1日 16時
