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大学のサークルで知り合ったA。
ふわふわの見た目に反して、気の強い女の子。
でもたまに泣く時はいつだって俺の前で。

『なんかふっかだった!』
とか

『ふっかがいい!』
って

それってどういう意味でどういう気持ちで言ってるんだろう。
それを聞いたところで、2人の関係はきっと恋人ではなくて。

異性の友達っていう世の中で一番曖昧だけど、居心地のよいやめたくない関係。

いつからかこいつと一緒に居たら楽しいんだろうなってぼんやり。
その気持ちにAを付けることはしなかった。


「とりあえず、かんぱいね。」

「ん。」

「あー美味しい。」

「お前、何杯目だよ。」

「今3杯目。今日はたくさん飲む。」

「祝い酒か。」

「うーん、達成酒かな。」

「じゃあ祝い酒じゃん、企画成功したんじゃねぇの?」

「したよ、会社的には。」

「会社的にってどういう意味?」

「私的には失敗、企画は結局田中の方が通った。」

「その割には元気な。」

「嬉しいから、企画が成功したのは。
 でも、成功することに私が必要だったのかなって思わなくもない。」


そんなことを言いながらイカの一夜干しを一味とマヨネーズに付けて、グルグルさせながら俯く。


「Aがしてたことは、意味があったんじゃない?」

「そう思う?」

「って思うけど?」

「私は、思うっていうか思いたい。」

「じゃあそれでよくね?」

「でもたぶんなんも出来てない。」

「お前なにしてたの?」

「うーん、田中のサポートばっかりだよ。
 過去のデータ拾ったり、残業する人分の差し入れ買ってきたり。
 大したことしてないなぁって今日の達成飲みで思ったんだよね。」


たっぷりマヨのついたそれを口に入れて、しょっぱいって言いながらビールを傾ける。


「それってどれも誰かがやらないといけないことだったわけでしょ?
 Aがそれをやってなかったら、達成してなかったかもしれないじゃん。」

「それはそうだけど…そんなこと誰にだってら出来る。」

「それをやる人は必要なわけ、ってことはAはちゃんと必要な人だったんじゃないの?」

「そうかなぁ、そうなのかなぁ。」

「そういうことにしとけ、酒がまずくなる。」

「そう…いうことにする。」


劣等感を感じることなんてない、ちゃんと仕事した。

それは俺だけが知ってることじゃなくてたぶん会社の人も知ってる。

3→←冬の帰り道 / Tatsuya.F



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作者名:kiki | 作成日時:2018年10月1日 16時

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