21話 ページ22
…
「うわっ!何これ美味しい!!」
智洋とやって来たのは駅前に新しくできたクレープ屋さん。
智洋の言っていた通り美味しくて、行列ができていたのも納得できた。
「ともは?何味にしたんやっけ」
そう言って横を見るけど
智洋は心配そうに私を見つめているだけ。
「とも…?」
智洋「なぁ、無理して笑わんでええよ。」
「え…」
智洋「Aのことくらい、見てたらわかるって。大毅がああ言ったのは…俺らが付き合ってるって勘違いしてるからやと思う。多分気遣ってくれたんや。」
それでも…
それでも私は悲しかったんだ。
必死に智洋に協力しようとする彼を見てると
私のことなんて何とも思ってないんだなって痛いくらい伝わって来るから。
「…うん、別に気にしてへんよ。それより、ここに連れて来てくれてありがとう。とものおかげで元気出た」
信じてもらえるように満面の笑みで彼を見つめたら
まだ少し心配しているような
だけど嬉しそうな顔で微笑んでくれた。
智洋「いつでも俺が話聞いたるからな。」
「え?」
智洋「Aが辛くなったら、俺に頼ってええよ。俺はいつでもAの味方やから。」
「とも…」
こんなに優しい人が
私のことを好きでいてくれるなんて
何だかもったいないと思った。
智洋にはもっとお似合いの人がいるよ
絶対、私なんかより
素敵な女の子がいるはずなのに…
どうして私なんだろう。
だけどそんなの私だって同じで。
私のことを想ってくれる智洋や望じゃなくて
どうして私にだけ冷たい彼なんだろうって…
そんなのもう何百回も考えたけど
好きな気持ちは消えなくて。
彼じゃなきゃダメなんだって
いつも心が叫ぶから。
「一口もーらい!」
智洋「あっ!も〜。笑」
悲しさを紛らわすように
智洋のクレープに噛り付いた。
智洋「じゃ、俺ももーらい!」
智洋が私のクレープを遠慮がちに一口食べて
そんなところにも彼の優しさを感じて。
無意識のうちに智洋と彼を重ねていた。
小さい頃は、智洋みたいに優しかったのに
いつからだろう、彼が私を避けるようになったのは…。
…
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作者名:ホワイトモカ x他1人 | 作成日時:2019年2月21日 20時