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19話 ページ20








「…望。」




無言で私の隣に腰を下ろすと、静かにサッカーボールを弄び始めた望。




「…どうしたん?」



彼がこんな風になっている原因は知っているけど

何も知らないふりして心配する素振りを見せる。





望「…なんで、わからんの。」



やっと発した彼の声は

掠れていてよく聞こえなかった。




望「俺…もうどうしたらいいかわからんねん。」


「え?」


望「ここ最近、Aと話してないだけで自分がどうにかなりそうで…だけど話す勇気なんか無くて。」



どんどん声が小さくなっていって

望は顔を隠すように俯いてしまった。




望「自分でも情けなくなるくらい俺…Aがおらんとあかんねん。」


「望…」



さっきまで持っていたはずのサッカーボールはもうどこかへ転がっていってしまって


望は両手で顔を覆いながら涙声で言った。





望「なんで…なんで智洋なん?」


「え…?」


望「俺…無理や。2人のこと応援なんてできへんよ」



顔は見えないけど

彼が泣いているのがわかった。




「付き合ってへんよ。」


望「…え?」




泣いている彼の体を思いっきり抱き締めれば

一瞬ビクッと震えて

だけどすぐに私に身を委ねた。




「色々あって…みんなが勘違いしちゃっただけで、私たち付き合ってへんよ。ともは私を慰めてくれただけ。」



何も言わない望の耳元に口を寄せて、



「だから、誤解…やで?」


優しくそう呟けば




望「ほんま…に?」




涙目で驚いている彼と目が合って


にこりと微笑めばまた赤くなる頬に安心した。




これで、また元に戻れる。





望「ほんまに…ほんまによかったぁ。」


安心してやっと笑顔になった望と見つめ合っていたら




「きゃっ」



突然ぎゅっと抱き締められて。




望「ほんまに、Aが智洋のとこ行っちゃったかと思った」



可愛すぎるその発言に、望の頭をよしよしと撫でていたら




照史「おい、そこ!イチャイチャ禁止!!望、試合始めんで。」






キャプテン桐山に連れて行かれた望。



えーもっとAといたいー!なんて言って頭を叩かれてる。






試合が始まる寸前、智洋が心配そうに私を見つめていたことは…




大毅と聖菜ちゃんが楽しそうに何かを話している光景に気を取られて気がつかなかった。









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作者名:ホワイトモカ x他1人 | 作成日時:2019年2月21日 20時

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