104話 ページ7
…
グラウンドの真ん中で彼をぎゅっと抱きしめる。
照史「…痛い、って」
「私の胸貸してあげるの、これが最初で最後やからな。思う存分泣いたらええやん。」
自分で言っておいて、上からすぎやろ、と苦笑いしたけど
照史は素直に私の背中に手を回し小さく泣き始めた。
最後までキャプテンとしてみんなを引っ張っていった照史。
きっと言いたいこともたくさんあっただろうけど
試合中も冷静にみんなをまとめていた。
一番泣きたかったのは照史だったって、私にはわかるから。
「3年間、お疲れ様。」
しばらく、彼の涙は止まらなかったけど
突然立ち上がると、満面の笑みで言った。
照史「よし、帰るか！」
最後まで無理に明るく振る舞おうとする照史に
なぜか涙が出そうになった。
照史「あーー！流星にアイス奢ってもらうはずやったのに、やってもうたーー！！」
大声で叫びながら天を仰いだ彼の手を掴む。
「今日くらい、ずっと甘えてればええやん。」
彼の手を引き前を行く私に、小さく笑う照史。
照史「ありがとう、A。」
そこからは急に甘えたモードになった照史に私がアイスを奢ってあげて
べたべただらだら絡んでくる照史をなんとか連れて帰って……
ちょっと、甘えればええやんとか言ったのを取り消したい気分でようやく家の前に着いた。
「ちょっと照史、ちゃんと立ってって！」
照史「いややー、Aおんぶー」
「いや無理無理、あんた自分の体重知らんの！？」
照史「1キロしかないもん！」
「あほちゃう…」
ようやく家の鍵を取り出し中に入る。
ドアを開けると、私に寄りかかっていた照史の重みで玄関で盛大に倒れ込んでしまった…。
「いった〜…もう照史！！」
照史「え、なにぃ？？」
私の上に乗っかってる照史はにこにこ楽しそうに、どく気配がない。
と、その時
淳太「うちの妹に……何してん？」
リビングから鬼の形相で淳太がやって来た。
あ、照史が私を押し倒したみたいになってるから勘違いして…？
慌てて誤解を解こうとしていると、今度は由紀の悲鳴が聞こえてきた。
由紀「きゃーー！！お兄ちゃんがAのこと襲ってる！！！」
その叫び声に中から次々と人が出てきて……
照史はこっぴどく怒られましたとさ。
…
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作者名：ホワイトモカ | 作成日時：2023年11月4日 3時
