141話 ページ44
…
「重岡くん、ちゃんと立ってや！」
大毅「ひゃー、おっこらーれたーー♪」
由紀「もう大ちゃんだるいって！笑」
望「さっきから何してんお前。笑」
あれから、放課後はほぼ毎日
みんな決められた役割ごとに残って準備することになった。
今は演劇部から借りた衣装合わせ。
さっきからふざけてばかりの大毅に苦戦している衣装係の子に、お疲れ様、と哀れみの視線を送る。
「うわぁ、Aちゃんってほんまにスタイルええなぁ」
「うんうん、お肌も真っ白やし白雪姫にピッタリすぎる！」
主役の私には、さっきから付きっきりで係の子達が様々なドレスを試着させてくれている。
正直いって、もうしんどい。
これで何着目？
まるで着せ替え人形になった気分やわ。
だけど女子たちの楽しそうなキラキラした目を見れば、帰りたいなんて言えなくて。
「きゃー！小瀧くん、見てや！」
「うわぁ、ほんまに王子様似合ってる」
女子たちの騒ぐ声に振り返れば
そこには着替え終わった王子様姿の望がいて。
真っ黒でかっこいい立派な衣装に身を包んだ彼はまるで本物の王子様のよう。
すらっと伸びた長い手足に
甘いマスクで微笑みかければ
きっと全校生徒が虜になってしまうだろう。
衣装係の子の話によれば
望のファンだという演劇部の子が、彼のために何日も徹夜して新しく衣装を作ってくれたらしい。
だから、望の衣装だけ
みんなよりちょっとだけ新しくてピカピカで、クオリティが高いのだ。
まったく、モテる男は違うなぁ。
望のせいで一気に色めき立つ教室。
女子たちの目はもうメロメロで。
誰よりも一番近い距離で
わかりやすく頬を染めて俯いた由紀に
望が満足そうに口角を上げたのがわかった。
大毅「イケメンって、ほんま得やなぁ…」
羨ましそうに唇を尖らして
わざといじけたような表情で言う大毅がかわいくて
思わず、くすっと笑みがこぼれる。
由紀「ほんまほんま、大ちゃんが着たらただのコントやもん！」
大毅「あほお前、俺が着たら眩しすぎて目開けれんくなるぞ！」
望「発光してるやんそれもう」
3人のやり取りが面白くてもっと見ていたいのに
私はまた、衣装係の子によって着替えのために置かれた仕切りの後ろに連れ戻された。
「Aちゃんは、ここからが本番やから！」
「そうそう！」
…
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作者名：ホワイトモカ | 作成日時：2023年11月4日 3時
