137話 ページ40
…
“ずっと、中間さんのことが好きでした
急にこんなこと言われても困るやろうけど…
今日、中間さんが久しぶりに学校来たって聞いて、いてもたってもいられなくなって…
もし、よかったら返事ください”
2年G組 佐藤くん。
黒縁メガネのいかにも真面目そうな雰囲気の男の子。
聞いたことも、見たことも、話したこともない。
あぁ、いつもの私なら
相手の好意に嬉しそうに、だけど切なげに微笑んで
その瞳に期待が募りに募ったあと
柔らかく、そして曖昧にそれを否定して。
だけど断ったあともどこか期待を捨てきれない相手を更に揺さぶっていつまでも私に振り回されてもらう。
それがずっと、私のやり方で。
なのに何でだろう。
何を考えているんだろう。
今回は彼を断る理由が思いつかない。
もう何度目かの授業終了を知らせるチャイムが鳴った。
あの後勝手に不法侵入した保健室のベッドから起き上がる。
先生は出張らしく誰もいなかったので、どこから手に入れたのか、前に流星から貸してもらった鍵で中に入った。
保健室を出ると廊下の向こうから騒がしい声が響いてくる。
…もう、昼休みになったのか。
私はまた、廊下を行き交う生徒たちから向けられる様々な視線を無視しながら自分の教室に向かった。
ガラッ！
そんなに大きな音は立てていないはずなのに、教室内にいた全員が静まり返って私を凝視した。
いつも通り机をくっつけて仲良くお昼を食べている彼らが視界に入って、迷わず彼の元へ向かう。
「…大毅。」
びっくりしたように顔を上げた彼の瞳が、左右に揺れ動く。
「話がある。」
彼の腕を引っ掴んで歩き出せば、無抵抗な体がよろけながら私に付いてくる。
…正直、意外だった。
こんなに素直に来てくれると思ってなかったから。
その時
後ろから、ガタッと音がして
望が焦ったように立ち上がったのがわかったけど
構わず大毅を引っ張って教室を出て行った。
…
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作者名：ホワイトモカ | 作成日時：2023年11月4日 3時
