135話 ページ38
…
照史が語った
長い長い昔話は
正直途中から全然頭に入ってこなかった。
嗚咽で息をするのも苦しい。
胸が張り裂けて死んでしまいそうだ。
“ごめん”
全身を包み込むように力強く私を抱き締めて言ったその言葉に
一体どれほどの感情が込められているんだろう。
正直
頭がぐちゃぐちゃで
どうすればいいのかわからない。
照史が悪くないことはわかってる
そして智洋も。
だけど今は
どうしようもなく2人が憎い。
3年前の夏
大毅が告白してくれていたら
照史がもっと早く私に話してくれていたら
そしたらこんなに苦しい思いしなくてすんだんかな？
考えてみてもよくわからない。
最近大毅が普通に接してくれるようになったのは
愛美ちゃんのことなんて全然関係なくて
智洋が聖菜ちゃんを好きになったと勘違いしていたから。
…ただ、それだけ。
そんなに大切なんだ。
私なんかと、比べ物にならないくらい
智洋を失うのが怖いんだ。
大毅は
私を失うのなんて怖くなかった…？
そんな覚悟でずっと過ごしてたの…？
それは一体どれほどの苦しみなんだろう。
誰のことも失いたくなくて
必死に繋ぎとめようと生きてきた
そんな欲張りな私にはわからない。
大毅のためだけに
他の全てを失うなんて
そんなこと私には出来るだろうか…？
．
淳太「…A。」
無言で立ち去った私を
照史は止めることも追いかけることもしなかった。
ただ、静かに流れる照史の涙に
耐えられなかった。
「…ただいま。」
ちゃんと笑えていたかな
淳太の前でだけは
いつも通りの私でいたかった。
家出したあとも
淳太にだけは心配かけたくなくて
頻繁に電話をした。
“急に寂しくなっちゃって、お母さんに会いに行ってくる”
バレバレすぎる嘘にも
いつも通り目を瞑ってくれた。
だから大丈夫
きっと淳太もいつも通り私に__________
「っわ、」
淳太「…。」
玄関のドアの前に立っていた私を
力強く乱暴に抱き寄せる淳太。
潰れてしまいそうなくらい強く抱き締めるから
息ができない。
「っ、じゅん…たっ」
淳太の身体が震えている。
鼓動は信じられないくらい速く脈打っていた。
ただ、涙を震わせながら
まるで怯えた子供のように泣く淳太を
黙って受け止めることしかできなかった。
…
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 839人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ホワイトモカ | 作成日時：2023年11月4日 3時
