134話 ページ37
Akito side
智洋の想いが強くなるほど
Aの想いが募っていくほど
大毅は徹底的にAを避けた。
ほんまに、そこまでするんか？ってぐらいに。
智洋とAの目を欺くためなのか
毎日のように由紀の部屋に通うようになった時は驚きを通り越して感心さえした。
何も知らない由紀は言わば被害者で。
だけど、大毅の作戦に
まんまと乗っかって、一緒にAを騙した俺は大毅なんかよりよっぽどタチが悪い。
今思えば
大毅が由紀の部屋に通っていることをバラしたり、俺が家に帰らないのは2人の邪魔をしたくないから、なんて嘘言ったのは
智洋と付き合ってると嘘をついたAへの当てつけだったのかもしれない。
大毅の徹底ぶりは、見ているこっちが辛くなるほどで
いつもAから微かに感じる、大毅にだけ向けられたその息が出来なくなるような視線に、仕草に、言動に、…見え隠れする熱を帯びた感情に
気づいていながら
知らないフリを続けてきた。
それは一体どれほどの苦しみなんだろう。
想像するだけで胸が張り裂けそうになる。
だけどその代償がこれなのか
花火大会の日
突然いなくなったAを追いかけて淳太くんは先に帰った。
なんとなく俺らの間に不穏な空気が流れる。
だって見たこともないほど苦しそうに、悔しそうに、痛みで叫び出しそうに歪んだ大毅の顔を見れば
誰だって何か大変なことが起こったんだとすぐに予想できて。
堪らず大毅を引っ張って近くにあった人気のない公園に連れて行けば
途端に溢れ出る涙。
あの日
初恋が終わった時とおんなじ涙が
次々と大毅の頬を伝っていった。
俺はそんな大毅に……………
何も聞けなかった。
怖かった。
Aを失うのが……………
堪らなく怖かった。
そして一生分の後悔をした。
俺がAと大毅の気持ちを無視せずにちゃんと向き合っていれば
Aはいなくならなかったかもしれないのに。
俺しか知らなかったのに
俺しかそれをしてあげられなかったのに
だから
Aに全てを話そう
それしか罪を償う方法がわからなかった。
何度もお願いして、淳太くんからAの居場所と電話番号を聞き出して
何度もお願いして、流星に電話をしてもらった。
流星だけが、Aを呼び戻せると思ったから。
…そして今
半月ぶりに、Aがこの町に戻ってきた。
…
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作者名：ホワイトモカ | 作成日時：2023年11月4日 3時
