133話 ページ36
Akito side
理由は簡単やった。
俺がAより淳太くんをとったのと同じ。
生まれた時から一緒に育った
家族よりも大事な存在
親友、なんて言葉よりもっと大切な人
…大毅は、Aよりも智洋を選んだ。
大毅「………智洋、Aのこと好きなんやって」
花火大会の次の日、見たこともないくらい辛そうな顔して、大毅が言った。
大毅「あぶなかったぁ……俺、智洋の好きな人取るとこやった、」
はは、と乾いた笑いが
寂しく俺の部屋に響く。
大毅「………おれ、応援すんねん」
「え…？」
大毅「智洋の恋、応援すんねん」
ほんまは、誰よりも先に言いたかったはずやのに
誰よりも大好きやって、一生大切にするって、
今でも叫びたいくらい苦しいくせに
ぽん、と優しく大毅の頭を撫でた。
途端にその綺麗な瞳から溢れ出る涙。
俺はあの時の涙を
一生忘れられへんと思う。
きっかけは些細なことやった。
小さい頃の大毅の家は両親が共働きで留守がちで。
いつも遊び相手になってくれたのが智洋やった。
放課後、大毅が毎日帰るのは自分家じゃなくて智洋の家で
あいつが言うには、俺は智洋と智洋ママに育てられたようなもんやって。
もうほんまに家族みたいな
まるで兄弟みたいに育った2人。
そんな大切な人の
初めてできた好きな人を
奪うことなんかできるはずがない。
だからその日
俺の部屋の中で
大毅の幼い初恋は終わった。
智洋「A、また宿題忘れてきたん？」
A「うん」
智洋「しゃーないなぁ、俺の写してええよ。」
智洋の愛おしそうな視線を
どこか寂しそうに、切なげに、
だけど嬉しそうに見守る大毅の横顔を
もう何年も眺めてきた。
大毅「お前ほんっまアホやなぁ！笑」
由紀「もぉ、大ちゃんうるさい！笑」
いつからか不自然なほど由紀にばかり構うようになった理由も
A「……」
そんな大毅を見つめる苦しそうなAの視線も
気づいていて、気づかないフリをした。
だって、このまま何もしなかったら
Aは誰のものにもならないと思ったから。
…なんて、相当歪んでんな、俺。
…
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作者名：ホワイトモカ | 作成日時：2023年11月4日 3時
