131話 ページ34
Akito side
大毅「お、俺、好きな人、おんねんけど…。中学入ってからその子すごいモテてて……それって、好きってだけじゃ、だめやんな…？」
少し俯きがちに
言葉を詰まらせながら
耳まで真っ赤にして何だか泣きそうな顔をする大毅に
心底驚いた。
“あの”大毅が
こんな顔するくらい好きな人がいるなんて
まったく想像もつかなかった。
俺でも知らない
そんな感情。
好きすぎて、泣きそうになるなんて
そんなの経験したこともない。
それが何だか無性に腹が立った。
「だめって、何が？」
無意識に冷たい声を出してしまった俺に
大毅の肩がびくっと震える。
大毅「好きってだけじゃ…いつか、取られてまうやろ、？」
不安そうに、潤んだ瞳で上目遣いに俺を見上げる大毅。
こいつ、こんなかわいい顔できたっけ？
「ただ、一言言えばええだけやろ。好きですって」
そこまで好きなくせに
なんで思いつかないん？
はよ、言ってしまえばいいのに。
この時の俺は、まだ他人事のように
そう言ってやることしか出来なかった。
大毅「でもな、」
ただそれだけなのに
なんでそんなに不安そうな表情のままなのか不思議でならなかった。
大毅「…壊したくないねん。」
「なにを？」
大毅「幼馴染みっていう関係」
ハッとした。
なんでかわからんけど
頭の中でサイレンが鳴り響いた。
生まれた時からずっと一緒やった
同じマンションで育った仲間たち。
家族と同じくらい大切で
だけど家族よりも脆い繋がり。
その繋がりを壊さないように
暗黙の了解のように
今まで頑なに守ってきた、その一線を
………越えるんか、大毅。
結局、俺は何も言えなかった。
大毅の背中を押すことも
諦めろと忠告することも。
大毅はなぜか彼女のことは誰にも言わないでいてくれた。
だから俺も、時々大毅の相談に乗ってやることにした。
相談って言っても大毅には告白なんかする勇気は微塵もなかったし
俺ももう二度とそれを口にすることはなかった。
ただ、今日もこんな事があって話せたとか
こんなとこが可愛かったとか
いわゆる惚気話。
普段は恋バナなんて1ミリも似合わない性格の大毅の
俺しか知らない一面だった。
そして
大毅の話を聞く度
大毅を見かける度
嫌でもその想い人がハッキリと伝わってきた。
…
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作者名：ホワイトモカ | 作成日時：2023年11月4日 3時
