124話 ページ27
…
大毅「はぐれんなって、ゆーたやろ！」
いつから探してくれていたんだろう。
ハァハァと息を切らし苦しそうに私を捕らえる彼。
必死に探してくれていたのが、その表情から安易に読み取れて。
大毅「…なんで、泣いて………っ、え？」
会いたくて会いたくて仕方がなかった彼を目の前に
安心しきってしまったようだ。
「うっ……ﾋｯｸ、」
1度も触れたことがない、その胸に
抱きついてしまった。
いつもなら、嫌がるくせに
私とこんなに近い距離で話すことすら許してくれないくせに
大毅「……。」ﾎﾟﾝﾎﾟﾝ
私を受け入れて、背中を優しくさすってくれる彼に
涙がさらに溢れてくる。
気づけば、彼が首から下げていたタオルを私の頭にかぶせてくれて
誰にも見られないように、そっと隠してくれた。
大毅「…落ち着いた、か？」
あれからどれくらい時間が経ったんだろう。
あのまま大毅は私の手を引き会場の近くに隣接していた人気のない神社まで連れてきてくれた。
「っ、」
私には一切かけられることがなかったはずの
甘く、優しい囁きに
心臓がまたトク、トクと速度を増していく。
大毅が頭にかけてくれたタオルから香る、少し汗の混じった彼の優しい匂いが
甘い声の響きが
その、優しい眼差しが
簡単に私の体温を上昇させていく。
大毅「…ガキじゃあるまいし、迷子なったくらいでそんな泣くなやぁ」
…きっと、私が泣いている理由は別にあるって
わかってておちゃらけたように慰めてくれる。
…あぁ、本当にこの人は。
大毅「おっ、もしもーし、淳太ぁ？」
淳太からの電話に出た大毅が、少し困ったように眉を下げる。
大毅「おん、おん、平気やで。あー、ちょっと待ってな」
多分電話の向こうで相当焦っているはずの淳太を軽くなだめ、
くるっと私の方に顔を向ける。
大毅「…もーちょいしたら、多分戻れる。あ、そーなん？わかった、待っとくわ〜」
電話を切ると、さっきよりさらに眉を下げて、困ったように私に視線を落とした。
…
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 839人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ホワイトモカ | 作成日時：2023年11月4日 3時
