この恋、難攻不落につき。3 (ページ24)

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121話ページ24

…

黒地に鮮やかな青い花が散りばめられた美しい浴衣に身を包み、遠くを見つめて立ち尽くす知宙。

その表情からは彼女の感情は読み取れなくて。

だけど思ったより平気そう、なんて思ってしまった。

だって私が知宙なら、いくら毎年恒例行事だとしてもこの場になんかいたくないもん。

ちら、と流星に目を向けると

いつものように片方の口角だけ上げて

にやりと一瞬知宙に目配せした。

…………え？

もしや、この2人ってまだ……………

照史「知宙！今日めーっちゃ綺麗やからあっくんがなんか奢ったる！」

突然、知宙の肩に腕を回し満面の笑みでそう言う照史の姿が目に入った。

…照史、もしかして知宙の気持ちを知ってる？

淳太「A、今年も綺麗やな。」

いつの間にか私の隣にいた淳太がうんうん、と腕を組みながら誇らしげに微笑む。

「淳太も…浴衣新しくしたんやね。」

せやねん、この前照史と崇裕と買いに行ってー、なんて

嬉しそうに鼻を擦る。

望「ほんまに…ほんまにほんまにほんまに綺麗や」

夜道の街灯に照らされて

ぽわっと赤くなりながら覗き込んでくる望が

浴衣のせいかいつもよりちょっと大人びて見えて。

ほんまに多いわ、なんてツッコミながらも

「ありがとう」

って微笑めば

望「…っ」

浴衣から覗く首元まで赤くなるから

余計に色っぽい。

ふと、楽しそうに智洋と前を歩く大毅に視線を移す。

似合ってるって

綺麗やでって

1番言って欲しいのは、今年も貴方だけで。

だけど今年はたぶん

今までの中で一番

大毅との距離がちょっと近づいているような気がする。

夏休み最初の英語の補習の時から

今までにないくらい私に優しくしてくれたし。

あんな風に大毅と過ごせたの、何年ぶりだろうなぁ。

だから今年は

目が合うだけでも

一言だけでもいいから

浴衣似合ってる、って大毅に言って貰えるような気がした。

私が毎年こんなに気合いを入れて綺麗におめかししてくるのは

全部全部貴方のためだもん。

崇裕「やっと着いたー！」

先頭を歩いていた崇兄が両手を上げて伸びをする。

花火大会が行われる会場は今年も人でいっぱい。

今年の花火大会はきっと

いつもとは少し違う

この時から、そう予感はしていた。

…