119話 ページ22
…
あれからしばらくして、花火大会当日がやってきた。
誰とも会っていないせいで流星と凛ちゃんの近況はわからないけど、たぶん上手くやっているだろう。
いつものように智洋の家へ行って、智洋ママに浴衣の着付けをしてもらってから智洋に髪の毛をやってもらう。
智ママ「A、今年の浴衣はとびきり綺麗やなぁ。去年のも良かったけど、今年のは過去1やで！」
智洋ママに褒められて、なんだか複雑な気分。
真っ赤なアネモネの柄が美しい今年の浴衣は、実は先週お母さんから送られてきたもの。
同封されていた手紙には、今年も夏休みに帰れなくてごめん、この浴衣でみんなと花火大会楽しんできて、と書いてあった。
別に、お母さんとお父さんのことが嫌いなわけじゃない。
淳太との二人暮らしでも十分楽しいし。
だけど、こんなにもほったらかされたらそりゃあ嫌にもなる。
それなのに浴衣一つで私のご機嫌を取ろうとするお母さんに腹が立った。
1日でも、家に帰ってくることがそんなに難しいの？
家族4人で過ごした日々なんて数えられる程度。
その分、淳太にはたくさん迷惑かけたのに
お母さんは淳太に感謝の一言もない。
一応家族だけど
自分の娘のお世話をしてもらってるんだから
淳太にもっと感謝の言葉をかけてあげてもいいのに。
お母さんは淳太に会うといつも、どこか冷ややかな視線を向けている。
いくら血が繋がっていなくたって
自分の息子のはずなのに………
智洋「…A？」
後ろから優しく呼びかけられて、ハッとする。
智洋「髪、できたで。」
英語の補習が終わってから久しぶりに見た智洋は、前より少し日焼けをした気がする。
いつの間にか私の髪の毛をセットしてくれていた彼が、少し恥ずかしそうに俯いた。
智洋「…浴衣、似合ってるな。」
鏡越しに俯いた智洋の紅く染まった頬を見て、自然と口元が緩む。
「ありがとう。…ともも、似合ってる。」
智洋の深緑の浴衣が、彼の金髪をより引き立たせているように感じた。
夏希「おーい2人とも、もう出発すんでー！」
夏希ちゃんに呼ばれて、慌てて玄関へ急ぐ。
夏希「うわぁ、Aめっちゃ綺麗や！」
そういう夏希ちゃんも、去年とは違う淡い薄紫の綺麗な浴衣を身に纏っていた。
今年はみんな、浴衣を新調したんかな…？
…
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作者名：ホワイトモカ | 作成日時：2023年11月4日 3時
