116話 ページ19
…
大毅「そういやさ、智洋、最近聖菜とはどうなん？」
いきなり始まった恋バナに、私も智洋も動揺を隠せない。
恋バナとか1番興味なさそうな大毅がこんな話を振るなんて、一体どうしたんだろう？
智洋「どうって…別に、普通やけど」
やっぱり少し気まずそうに
私の顔をちらちらと伺いながら答える智洋。
この状況で恋バナさせられる智洋が可哀想だ。
いくら智洋がもう私を好きじゃないと思っていたって……
少し前までは私のことを好きだったって大毅もよく知っているはずなのに
なんでこんな話しだしたんだろう？
この場には私もいるのに……。
大毅「いやぁ〜実はさ、最近聖菜がうるさくて。智洋に色々聞いてこいってしつこいねん。自分で聞けばええのにさぁ」
ちょっと困ったように笑うと
智洋の表情を伺う。
大毅「けどさ、智洋ももうほんまは気づいてるやろ？あいつの気持ちに。だから智洋はどう思ってるんかなって、俺も気になって。」
嬉しそうに太陽みたいな笑顔で智洋を見つめる大毅。
智洋の恋を心の底から応援してるって
智洋もきっと聖菜ちゃんのことが好きなんだって
もう、私のことなんて眼中にないやろ？って
大毅の瞳が、そう言っているように見えて。
今この瞬間も、智洋の視線はこんなにも私に向いているのに
なんで彼は気づかないんだろう。
切ないその視線に顔を背ける私に対して
彼は私から視線を逸らすことなく力強く言った。
智洋「好きやない。…………俺、せっちゃんのことは好きやないよ。」
思わず顔を上げてしまい
絡み合う視線。
ただ、真っ直ぐに
まるで私に訴えているかのように
崩れない表情、意志の強い瞳。
大毅が、隣で
息をのむ音が聞こえた。
大毅「……………なんや、そーやったんや」
その苦笑いの裏で
一体何を考えているんだろう。
そろそろ、行こう
智洋の一言で、気まずい空気のまま教室を後にした私たち。
大毅は、予想外の智洋の答えに
まだ、動揺しているようだった。
下駄箱で靴を履き替えて、2人を見送る。
これも、今日で最後か。
智洋は、いつも通り
いや、いつもよりちょっと寂しそうに笑って
“気をつけて帰るんやで”って優しく私の頭を撫でる。
けど、大毅は
いつものように振り返って手を振ってくれることもなく
さっさとグラウンドに走って行ってしまった。
…
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作者名：ホワイトモカ | 作成日時：2023年11月4日 3時
