113話 ページ16
…
教室から出て、隣同士。
自然と並んで歩く。
こんな風に隣に並んでも何も言ってこない大毅に
また、頬が緩んでしまう。
私が隣にいてもいい、ってことだよね…。
嬉しすぎて、胸のあたりをぎゅうっと掴んだ。
その時、隣の教室から見慣れた金髪の彼が出てきて。
大毅「あっ、智洋！」
途端に大毅は嬉しそうに彼に駆け寄った。
智洋「大毅！…っと、A…」
まさか、智洋も英語赤点だったんだ。
大毅「智洋も補習やったん！？知らんかった〜」
智洋「俺も、赤点やったの俺くらいやと思ってた。笑」
いつものように仲良さげに、楽しそうに前を歩く2人の後を
慌てて追いかける。
2人とも、私のことなんか見えてないかのようで
一気に寂しさが増す。
もっと大毅と一緒にいたかった
早く智洋と仲直りしたい
そんな2つの感情が、胸の中でぐるぐると渦巻く。
下駄箱で靴を履き替え終わると
大毅がくるっとこちらに振り返って
大毅「じゃ、また明日なA。」
私には滅多に向けられることのない爽やかな笑顔でそんなこと言うもんだから
一瞬にして体温が上がってしまった。
「ま、た、明日…」
ぎこちなくそう返した私に背を向け
あっという間にグラウンドに走って行ってしまった大毅。
智洋「…また明日、A。」
そう言った智洋は、やっぱりまだ目を合わせてくれなくて。
「また明日！…練習、がんばってな！」
いつもより明るく言ってみたけど
智洋が振り返ってくれることはなかった。
サッカーの練習着姿でグラウンドに走って行った2人。
そういえばサッカー部は夏休みほとんど毎日練習があるって、望が嘆いていた気がする。
大毅も朝から練習着だったはずなのに
一緒に帰れるかも、なんて期待していた私は馬鹿だ。
外に出ると朝よりも気温が上がっていて、一瞬で汗が滴り落ちてくる。
なるべく木陰を歩こうとグラウンドの隅を歩いていると
サッカーボールが転がってきた。
望「A！補習お疲れ」
走ってやって来たのは、もうすでに汗だくになっている望で。
「望も、練習お疲れ。午後も頑張ってな」
にこりと微笑めば、嬉しそうに頬を赤く染める。
大毅とは普通に話せるようになった。
望ともまた元通りに戻れた。
だけど、智洋は……
聖菜ちゃんと楽しそうに話す彼の姿に、自分でも嫉妬しているのがわかった。
…
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作者名：ホワイトモカ | 作成日時：2023年11月4日 3時
